「人事部門」と聞くと、経営に関わることを想像しにくいかもしれない。人事の業務範囲が直接的に経営と結び付くイメージがないからだ。しかし、これからの時代の経営を考えたとき、実は人事こそが重要な役割を担っているとも言える。経営改革の土台となる企業文化や人材に、最も深く関わるのが人事という仕事だからだ。
6月28日に開催された「TECH+フォーラムセミナー 人事テック Day 2022 Jun.人材の価値を最大限に引き出すために」に、アステラス製薬 人事部門長の杉田勝好氏が登壇。同社における経営改革の概要と、そこに貢献する人事部門の在り方について講演を行った。
ますます求められるグローバルな人事戦略
アステラス製薬は、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して2005年に誕生した。売上1兆3000億円、従業員数14,000人を誇る巨大製薬企業である。同社は立ち位置こそ日系企業ではあるが、事業や従業員の構成はもはや完全なグローバル企業だ。売上のうち8割は海外が占めており、今後事業が成長を続けても、日本での売上比率が上がることはないと予想されている。
その事実は、同社における今後の経営戦略や人事戦略にも大きな影響を与える。「今後はさらにグローバル的な人事戦略が求められるだろう」と杉田氏は言う。
グローバルな人事戦略とは、一言で言えば「経営改革に貢献する人事」である。アステラス製薬は「Corporate Strategic Plan 2021」(略称:CSP)という経営計画において、大きく「戦略目標」「成果目標」「組織健全性目標」の3つの目標を設定している。これらの目標のうち、特に人材とカルチャー、環境に焦点を当てた組織健全性目標の実現を通じてCSP実行に貢献することが、同社の人事部門に求められているのだ。
実は、組織健全性目標は2018年に策定された前回の経営計画にはなかった項目だという。
「組織健全性目標は、組織の健全化やカルチャーの醸成、タレント育成などを通じて、イノベーションの促進や人材の活躍、コラボレーションの浸透を目指すためのものです」(杉田氏)