検査は、指先から血液1滴ほど(5μL)を採取してカートリッジに入れ、チップとともに装置にセットしてスイッチを押すだけの完全自動で行われる。チップへの血液の滴下、試薬との反応、洗浄、検出という一連の工程は8分ほどで完了し、測定結果が装置上に表示される。同システムによって得られたデータは、酵素結合抗体吸着(ELISA)法による検査結果と高い相関性で一致したとする。

  • SARS-CoV-2タンパク質を固定化したマイクロアレイチップによる、迅速な抗体診断システムの概要図

    SARS-CoV-2タンパク質を固定化したマイクロアレイチップによる、迅速な抗体診断システムの概要図 (出所:理研Webサイト)

マイクロアレイチップを用いて、SARS-CoV-2感染後回復者(ワクチン接種歴なし)と、非感染のワクチン2回接種者、それぞれの血清の抗体「免疫グロブリンG」の検出が行われたところ、感染後回復者はウイルス内部のタンパク質であるNタンパク質に対する抗体ができているのに対し、非感染者(Sタンパク質ワクチン接種者)はできていないことが確認できたとする。

  • SARS-CoV-2タンパク質を固定化したマイクロアレイチップによる、抗体検査原理の概要図

    SARS-CoV-2タンパク質を固定化したマイクロアレイチップによる、抗体検査原理の概要図 (出所:理研Webサイト)

一方、Sタンパク質に対する抗体は、感染後回復者、ワクチン接種者ともに形成されていることも判明。感染時期やワクチン接種時期にもよるが、ワクチン接種によりより多くの抗体ができていることが確認できたという。その抗体量は、SARS-CoV-2の変異が進行するほど(野生株よりデルタ株、さらにオミクロン株)少なくなるものの、ワクチン接種により変異株に対する感染防御効果を持つ抗体がある程度作られることが示されたとする。

また、3回目ワクチン接種前後で変異株のSタンパク質に対する抗体量が調べられたところ、2回目のワクチン接種から6か月以上経つとかなり減少していることが確かめられたとする。ただし、3回目のワクチン接種をすれば、1か月後にはかなりの抗体ができることも示されたとしており、このようなデータを集積すれば、ワクチン接種の適正な時期やワクチンの有効性を判断するためにも役立てられると研究チームでは説明している。

なお、今回のシステムにより、医療現場において抗体価精密検査が可能になるとしているほか、感染流行中に個人個人がさらにワクチン接種をする必要があるかどうかを判断し、疫学調査を基にした今後の感染状況予測、ワクチン接種による免疫獲得の検証、変異株対応ワクチン開発の必要性判断など、パンデミックへの対応にも利用できることが期待できるとしている。