具体的には、円偏光ポンプによって生成された励起子スピンの量を反映して、直線偏光プローブ光の偏光面は回転するという特性があり、この回転角を高精度に計測し、時間分解空間イメージングを行うことにより、励起子スピンの時空間情報が明らかにされたという。
二次元層状ハライドペロブスカイト単結晶「(BA)2(MA)3Pb4I13(BA=C4H9NH3、MA=CH3NH3)」を対象に室温で測定が行われた結果、弱励起条件では、ポンプビーム形状を反映したガウシアン形の空間パターンを保ったまま励起子スピンが緩和していく様子が観測されたとする。
一方で、強励起条件では、励起直後のガウシアン形の空間パターンが励起から時間が経つにつれて、リング状の空間パターンへと発展していき、同時に高速な励起子スピン輸送が生じていることが確認されたとする。さらに、このような励起強度に依存した励起子スピンの時空間ダイナミクスが、励起子・励起子交換相互作用に起因していることが解明されたという。
なお、今回の研究成果により、二次元物質における励起子スピン自由度を利用した光スピンデバイスが室温で実現できる可能性が示されたと研究チームでは説明する。研究チームでは、このような特異な光スピン機能に加え、二次元層状ハライドペロブスカイトは、優れた光電・発光特性を示すことが知られていることから、次世代の太陽電池や発光ダイオード材料としても注目されており、これまで盛んに研究されてきた電気・光学特性に加えて、スピンにも注目することで、新たな材料や光電デバイスの開発が期待されるとしている。