半導体市場動向調査企業IC Insightsが、「Micronと台湾の半導体企業は炭鉱のカナリアか?」という奇妙なタイトルの発表を行った。
採炭場のカナリア(Canaries in the Coal Mine)とは、何らかの危険が迫っていることを知らせる前兆を指す英語の慣用句で、炭鉱などで有毒ガスが発生した際に、人間よりも先にカナリアが鳴き声をやめたり倒れたりすることに由来している。
発表によるとIC Insightsでは、Micron Technologyが出した2022年度第4四半期(6~8月)業績ガイダンスや台湾半導体メーカーの6月業績の速報値は、半導体産業の好況から不況への変換点の警告サインである可能性があるとしている。
特に半導体メモリ3位のMicronが2022年度第3四半期(3~5月)の業績は、売上高は前四半期比11%増、前年同期比19%増の86億ドルと好調であったが、第4四半期についてのガイダンスは売上高が前四半期比17%減の72億±4億ドルと予測している。通常であれば、7月および8月を含む四半期は、米国のback to schoolもあり、高い成長が期待できる四半期であり、今回のMicronのガイダンスは、好業績が期待できる四半期のメモリ市場の動きが弱いことを示していると捉えることができる。
また、台湾の上場半導体メーカーは四半期ごとの発表のほか、毎月の売上高を報告することが求められており、この月次の売上高の変化は、半導体市場の方向性を早期に示す指標として受け取られている。
台湾半導体メーカーの売上高トップ10社の2022年6月の売上高を見ると、合計値で前月比5%減となったほか、TSMCを含む上位4社中3社が前月比でマイナス成長を記録、トップ10社で見ても6社がマイナス成長となっている。中でも注目すべきは、2021年の売上高が前年比78%増と躍進した7位のNovatekの売上高の急減(前月比26%減)と、DRAMサプライヤであるNanyaの同16%減であり、これらの減速は、Micronの2022年第4四半期業績ガイダンスで示唆されたメモリ市場の減速見通しを裏付ける可能性があるとしている。
また世界最大のファウンドリであり、台湾最大の半導体サプライヤであるTSMCの売上高が同5%減となったことも注意が必要だという。同社は2016年から2021年までの5年間、6月の売上高は前月比で平均14%増、2018年のみ前月比13%減という好業績を記録してきているためだという。さらに、同社の第3四半期業績についても、前四半期比で見ると2016年から2021年にかけて、平均16%増となり、2011年以降、常に第2四半期を上回る売り上げを達成してきており、IC Insightsでは、TSMCの第3四半期業績がどう推移するのかを注視する必要があるとしている。