東京農工大学(農工大)は7月1日、繊維、食器類、ペットボトル、自動車部品、農業用資材などの原材料として世界中で大量に利用されており、自然に分解しないために大きな社会問題となっているポリエステルを単量体に完全分解する触媒反応を開発したことを発表した。

同成果は、農工大大学院 工学府応用化学専攻の安倍亮汰大学院生、同・大学院 工学研究院応用化学部門の小峰伸之助教、同・平野雅文教授、東京都立大学大学院 理学研究科の野村琴広教授、同・大学 学術研究支援総合センター 機器分析施設の野口恵一教授、大阪産業技術研究所 森ノ宮センターの平野寛博士、同・東青史博士らの共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。

ポリエステルは汎用性高分子であり、現在、廃プラスチック(プラごみ)や、マイクロプラスチックなどといった社会問題を引き起こしている。ペットボトルに使われるポリの一種のPET(エチレンテレフタレート)は大量の強いアルカリ性のもとで分解できることは知られていたが、分解後には大量の酸で中和する必要があった。そのほか、さまざまなプラスチックの分解方法が報告されてはいるものの、いずれも何かしらの課題を抱えており、添加剤不要、かつ効率的な分解方法の実現が求められていた。

研究チームは今回、ポリエステルが「ジカルボン酸」という両端にカルボン酸が結合した単量体と、「ジオール」という両端がアルコールである単量体の反応により合成され、「エステル構造」が繰り返されている点に着目することにしたという。

エステル構造は、酸とアルコールにより水が脱離する「縮合反応」により生成される構造であり、もしポリエステルのエステル構造を、メタノールなどの低分子量のアルコールに次々と交換して置き換えていくことができれば、最終的にはポリエステルの原料であるカルボン酸のメチルエステルとジオールに分解することが可能となることが考えられているが、塩基や添加剤なしに、ポリエステルを効率的に分解する触媒は知られていなかったという。