プラスチックごみが世界的な問題となっていることはご存じだろう。

プラスチックは、さまざまなところで活用されている。理由は、丈夫であること、空気や熱も通しにくいこと、多様な形状に加工できることなどが挙げられるだろう。

しかし、多くのプラスチックは使い捨てであり、ごみとして捨てられると自然に分解されることがほとんどない。そのため環境にも良くない。

そこで解決策を見出しているのが、英国のスタートアップNotpla。彼らは、海藻などの自然由来のものから、透明な包装材料を製造できる技術を有している。今回はそんなNotplaについて紹介したいと思う。

Notplaとは?

Notplaとは、英国のスタートアップ。海藻類からプラスチックのような包装材料を製造することができるすごい技術を開発している。

CEOは、Rodrigo Garcia Gonzalez氏とPierre Paslier氏の2名。彼らは、インペリアル・カレッジ・ロンドンでイノベーション工学を専攻。修士号を取得している。彼らが学生時代に叩き込まれたのは、“問題解決のための新しい考えを入れること”だという。

そんな中、彼らは世界的な問題となっているプラスチックごみに対して、革新的な代替策を見出すことに強い興味を抱いたという。

そこで彼らは、「Notpla」という包装材料を開発。社名と同じ名称だ。このNotplaは、海藻から作られている。海藻の種類までは不明だが、見た目ワカメのようにみえる。褐色、黒色に近い海藻で、これが透明なプラスチックのようなものになるというから驚きだ。

実は、Notplaのサイトでは、メンバー全員が、ワカメだろうか、海藻を手にしているユニークな紹介がされている。

ちなみに、以下の写真は、CEOの2名がロンドンで海藻類から作ったプラスチックのような包装材料を製品テストしている一幕という。お互いとても仲が良い最良のパートナーだというのが伺える。

  • ロンドンで行った製品テストでの一幕

    ロンドンで行った製品テストでの一幕(出典:Notpla)

このNotplaの製造技術は、次のようだ。まず海藻を乾燥し粉末状にする。そしてその粉末を企業秘密の工程を経て、濃厚で粘着性のある液体に変換。それを乾燥させることで、プラスチックのような透明なフィルムができるのだという。

この企業秘密のところは当然不明だが、サイトには以下のような製造装置がアップされている。ただ、この装置は、現在も開発中であり、最終段階のものではなさそうだ。

  • Notplaの製造装置

    Notplaの製造装置(出典:Notpla)

Notplaの技術は、包装紙はもちろんのこと、粉末や乾燥食品のパケット、ネジや釘など非食品用の小袋、水溶性フィルムと不溶性フィルム、ヒートシール可能なフィルムなども製造可能というからすごい。

ちなみに、Notplaが開発した素材がオレンジピールよりも早く自然分解している動画を見ることができる。この動画だと、Notplaはおおよそ10日くらいで完全に分解されているようだ。

【動画】

Notplaが開発した素材がオレンジピールよりも早く自然分解されている様子が撮影された動画

コロナ禍において、使い捨てプラスチックの使用が大幅に増加したという。この背景から、彼らはテイクアウト用の段ボール箱に塗布されたプラスチックの薄層をNotplaに置き換えたという。「Notplaコーティング」というソリューションだ。

  • Notplaコーティングしたテイクアウト用の段ボールボックス

    Notplaコーティングしたテイクアウト用の段ボールボックス(出典:Notpla)

Notplaの前身であるSkipping Rocks Labは、2013年に「Ooho」というこの包装材料を用いた小包を発表している。このOohoは、ソースや飲料用のゴミの出ないパッケージとして活用できて、ちょうど上図のテイクアウト用の段ボールボックスのケチャップの包装材料がそれにあたる。

ほかにも、マラソンの給水に採用されている。考えれば、考えるほど、さまざまな用途に応用できそうだ。

  • Oohoがマラソン大会の給水として使用されている

    Oohoがマラソン大会の給水として使用されている(出典:Notpla)

いかがだっただろうか。彼らのスマートな思考術とその思考術を使ってソリューションを具現化し実現へと導くその“力”に魅力を感じる。

Notplaは、20~150ml用のOohoの製造装置をリースし、カートリッジビジネスを展開する計画だという。2021年には開始というからもうすぐだろうか。