知財とマーケティングの知られざる関係性とは

続いて、KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科教授の杉光一成氏による、「企業価値の向上とは『商標』を『ブランド』にすることである ~知財とマーケティングを架橋せよ」という基調講演が行われた。

  • KIT虎ノ門大学院の杉光教授

元々は知的財産が専門だったという杉光氏は、ここ10年ほどはマーケティングを専門にしているという。

その杉光氏がマーケティングと知財の関係に気付いたのは、1960年頃の米ゼロックスによる世界初の普通紙コピー機発売をめぐる動きだったという。

当時は米国のゼロックス本社へ出向かなければ入手できないとまで言われる状況だったそうだが、その背景には600件近くの特許があると杉光氏は指摘する。

また杉光氏は、差別化が重要という点も、知財とマーケティングで共通だと語る。その視点を、マーケティングの権威で杉光氏が著作を翻訳したフィリップ・コトラー氏に話したところ、驚きをもって受け止められたとのことだ。

  • 「差別化」が重要なキーワード

だが、両者には異なる点もあるという同氏は、その例として知財における商標とマーケティングにおけるブランドは同じものなのか、との問いを投げかけた。

ブランドの本質は顧客吸引力だと指摘する杉光氏は、商標を出願すれば即ブランドになるわけではなく、顧客吸引力を得るための施策が必要であり、商標をブランドにしていくことが重要だと説いた。

  • 商標とブランドは同一ではない

杉光氏は商標がブランドになるために必要な要素として、識別力が高い、品質が良い、サービスが良い、商品説明と実際の品質に差異が無いという4点を挙げた上で、模倣品対策の重要性を指摘する。模倣品により正規品のブランドが傷付き、それにより顧客吸引力が失われてしまうからだ。

杉光氏は「知財とマーケティングは、連動させればさせるほど価値が出てくると思っています」と、その重要性を強調した上で、「顧客吸引力が生まれれば自然に売れる、マーケティングの究極目標になり、そうなれば、どんどん企業の価値が向上する」と、自身の講演を取りまとめた。

  • 知財は最強のマーケティングツール