三菱電機は6月1日、未来に向けた同社の技術・製品・取り組みを紹介するプライベート展示会「人と地球と 心でつなぐ2022 ~共に創りたい未来~」の報道関係者向け内覧会を開催した。

同展示会は、同社のクライアントを対象とし、6月1日から6月3日までの開催を予定。3日間で1000人の来場を見込んでいるという。

展示エリアでは、10年後の近未来の課題を解決するような技術を紹介している。そして、「未来シアター」と題したビデオ展示では同社が実現を目指す2050年ころの未来の姿を紹介。同社は2050年までに目指す社会の姿として「笑顔あふれる持続可能な社会」を掲げている。

展示エリアでは「カーボンニュートラル」、「サーキュラーエコノミー」、「安心・安全」、「インクルージョン」、「ウェルビーイング」の5つのテーマで合計28個の研究成果や技術を紹介している。

力を目で感じる「バーチャルハプティクス」技術

展示の1つに、テレプレゼンスロボット(遠隔地から操作するロボット)の力感覚を“目”を通じて操作者に伝える技術があった。

ロボットの感覚をヒトに伝える際に、手や腕に装具を装着して、感覚を伝達する手法はすでにある。しかし、同社では、作業者への負担を鑑み、少ない操作インタフェースで感覚伝達を行う方法として“目”と“クロスモーダル”に着目したのだという。目だけで感覚伝達が可能になれば、VRゴーグル1つを装着すれば済むこととなる。

クロスモーダルとは、ヒトの五感のうち視覚と触覚や、視覚と聴覚など、別々の感覚が互いの感覚に影響を及ぼしあうことだ。

同社では、ロボットがモノをつかんだ時の重みを色や光で表現することで、ヒトに重みを感じさせ、ロボットの感覚をヒトに伝達する手法の研究を行っている。

展示ブースでは、そのデモを体験することができた。

デモでは、少し離れた場所にあるロボットを遠隔で操作する。画面には、ロボットの視点が映し出されている。

  • 同社が開発を進めるテレプレゼンスロボット

    テレプレゼンスロボット。操作場所とは少し離れた場所に設置されている。このロボットを遠隔操作する

センサに手をかざしてロボットを操作し、対象物をつかむとロボットの把持部分の色が変わる。対象物を離すと、また色が変わる。

同技術では、この色の変化によってロボットの感覚をヒトに伝達することを目指している。

  • センサに手をかざし、ロボットを操作する。何もつかんでいない時は把持部分が白く縁取りされている。コントローラを使って操作することも可能だが、今回はコロナ渦での開催のため、非接触で操作が可能なセンサとしたという

    センサに手をかざし、ロボットを操作する。何もつかんでいない時は把持部分が白く縁取りされている。コントローラを使って操作することも可能だが、今回はコロナ渦での開催のため、非接触で操作が可能なセンサでの操作としたという

  • 対象物をつかむと、把持部分が白に変わる。この色の違いでクロスモーダル現象を起こすことを目指している

    対象物をつかむと、把持部分の色が変わる。この色の違いでクロスモーダル現象が起き、力覚を感じるという

今回は、コロナ渦での開催で、非接触を実現するためにディスプレイを用いたが、本来はVRゴーグルの着用を想定しているという。

研究により、音や振動に比べても、光による視覚的力触覚は、繊細な力加減を実現でき、操作中の脳への負担が軽減されることを確認したという。

そのため、ロボットの遠隔操作に適しているとし、将来的には、製造業や小売業などさまざまな場面での活用を目指していくとしている。