信州大学は5月25日、セイコーエプソンならびにASPINAと相互教育連携を締結し、学部授業科目を新設することで合意したと発表した。

これを受け、信州大学は新たな科目「先端産業論」を新設するとしている。同科目は、企業の現場における技術開発、企業活動の実際を学ぶ機会は、将来の技術者としての活躍が期待される学生にとっても重要な動機付けとなり、大学で学ぶ意義を再認識する機会となり得るという考えの元、異分野融合、あるいはAI技術の基礎となる数理データサイエンス教育など、より広範囲な視点での教育が求められている現状を踏まえ、工学技術のみならず、グローバル視点や経営視点でのアプローチ事例などを交え、産業界の現場の感覚を肌で感じられる授業を提供することを目指すとしたものとなる。

  • 信州大学 工学部が進める相互教育のイメージ

    信州大学 工学部が進める相互教育のイメージ (提供:信州大学/セイコーエプソン/ASPINA、以下同様)

1年生で基礎を学び、2年生で専門の基礎を学び、3年生で専門の発展系を学び、4年生で卒業研究に挑むというのが信州大の工学部の考え方であり、先端産業論はその3年生の科目の1つに位置づけられるとする。

  • 信州大学工学部における「先端産業論」の位置づけ

    信州大学工学部における「先端産業論」の位置づけ

また、1つの企業によって8回連続の授業を実施することは、少なくとも同大工学部では初めての試みとなるとしており、こうした試みにより、1つの専門科目にとどまらず、さまざまな工学分野の融合によるイノベーション視点を啓発する多面的な授業内容を実現できるようになるという。

  • 「先端産業論」の特徴

    「先端産業論」の特徴

エプソンが提供する「先端産業論(エプソン工学)」は、2022年度後期に全8回(1単位)の開講予定で、対象学生は学部学生(工学部共通科目)としている。一方のASPINAによる「ASPINA特別講義」は2022年度前期に開講され、6月4日より実施。すでに受講登録は完了ずみで、工学部1学年あたり485名のところ、190名が受講登録済みだという。

  • エプソンが提供する先端産業論(エプソン工学)」の概要

    エプソンが提供する「先端産業論(エプソン工学)」の概要

  • 「先端産業論(エプソン工学)」の講義内容

    「先端産業論(エプソン工学)」の講義内容

エプソンでは、新たなイノベーション創出に立ち向かう学生の応援のために、先端産業論(エプソン工学)を通し、物理・化学・数学などが技術・商品開発のベースになっていることを学生のみなさんに実感してもらいたいと、意気込みを説明しており、実施講座の目的を、企業技術者の体験に基づく講義を通じ、「基礎工学が技術・商品開発のベースになっていることを養う」、「社会を変革する新しい価値創造(イノベーション)に向け、広くものを見る視点を養う」、「大学との連携を深め、有効な共同研究の発掘につなげる」といった3点を挙げている。

また、ASPINAは、ASPINA特別講義について、講師の実体験や事業の実例を織り交ぜ、企業ならではの面白さを感じながら、学生の職業選択や就職活動に役立つカリキュラムを目指すとしており、講師陣には同社の金子元昭社長をはじめとする経営陣や技術者数十人が、その専門知識を元に講義を行う予定としている。

  • ASPINAが提供する「ASPINA特別講義」の概要

    ASPINAが提供する「ASPINA特別講義」の概要

  • 「ASPINA特別講義」の講義内容

    「ASPINA特別講義」の講義内容