具体的には、酸化銅(II)(CuO)粉を原料とし、ヒドラジンを還元剤とし、ヘキサン酸を保護剤として銅ナノ粒子が合成された。得られた銅ナノ粒子は約80nmの粒子径を持ち、FT-IRでの確認が行われたところヘキサン酸でのコートができており、表面は疎水性であったという。疎水性表面は水の吸着を抑制でき、さらなる酸化を抑えやすくなるという。

さらに、このナノ粒子について加熱しながらのX線回折測定が行われたところ、80℃ぐらいまではCu64O相が維持されており、比較的この相は安定であることが確認された。同粒子は、ビーズミルを用いてアルコール系溶媒に50wt%で分散させ、ペースト化することが可能だとするほか、得られた粒子の表面は完全に金属銅ではなく、Cu64O相やCu2O相が見られたとする。

  • Cu64Oを持つ粒子の焼結時のヘキサン酸との反応によるネッキング形成

    Cu64Oを持つ粒子の焼結時のヘキサン酸との反応によるネッキング形成 (出所:北大プレスリリースPDF)

実際に同ペーストをアルミナ基板上に塗布し、管状炉を用いて窒素中、3%水素を含む窒素ガス中での焼結が行われたところ、窒素中での焼結においても、180℃で10-4Ωcmレベル、200℃で、10-5Ωcmレベルの導電性が発現することが確認されたという。

また、還元性を持つ水素を含む窒素ガス中での焼結では、銅ナノ粒子同士のネッキングがさらに進み、高い導電性被膜が得られたとのことで、この被膜の表面および断面の走査型電子顕微鏡像観察から、銅ナノ粒子同士が焼結によりネッキングを形成し、水素を含んだガスの場合、大きくネットワーク形成したことを確認。X線回折から計算される結晶子サイズも、水素を含んだガス中での焼結で、3倍近く大きくなることが明らかにされたとしている。

なお、金属の低温焼成のためには、低温で金属原子を拡散する必要があるが、今回の研究のように、低温での結晶構造変化を使うことができれば、原子の拡散が容易になり、ネッキングが生じて抵抗率の低い被膜が得られると考えられると研究チームでは説明している。特に、微酸化状態から金属への結晶構造変化を利用する低温焼成の例はこれまで報告されておらず、新しい低温焼成材料の創製に寄与することが期待されるとしており、今後は、さらなる高濃度ペースト化、分散媒の制御による低温焼成での、より緻密な導電被膜形成に向けた努力を重ねていくとする。

一方、今回得られた銅ナノ粒子ペーストは接合材料にも利用できると考えられることから、パワー半導体用の接合材料としての応用可能性も追求していくとするほか、さらに微細で安定な銅ナノ粒子の合成も検討し、銅を用いたプリンテッドエレクトロニクスの実現を目指し、これらの銅ナノ粒子材料の低温焼結性を利用した接合材料への応用展開も目指すとしている。