また、電解放射型超高分解能走査型電子顕微鏡で観察したマウス腎臓の200nmの準超薄切片の後方散乱電子像においても、マイヤーヘマトキシリン-鉛染色法は、腎臓皮質尿細管と腎臓糸球体が広領域かつ高画質で観察されることが判明した。

酢酸ウラン-鉛、マイヤーヘマトキシリン-鉛、ギルヘマトキシリン-鉛の比較が行われたところ、コントラストに大きな差があることが判明し、酢酸ウラン-鉛とマイヤーヘマトキシリン-鉛のグレー値の高低差(約50~60)は、ギルヘマトキシリン-鉛のグレー値の高低差(約20~25)より大きく、細胞小器官や核を含む細胞膜系に対して前者が良好なコントラスト・画質が得られていることが確認されたとする。

  • 鉛溶液で染色された電子顕微鏡像

    (左)さまざまな種類の細胞や組織を、マイヤーヘマトキシリンで染色した後、鉛溶液で染色された電子顕微鏡像。(右)マウス肝細胞を酢酸ウラン溶液(a)、マイヤーヘマトキシリン(b)、ギルヘマトキシリン(c)でそれぞれ染色後に鉛溶液による後染色が施された電顕画像。画像解析ソフトImageJを用いて、その染色効果が定量解析された (出所:工科大Webサイト)

なお、マイヤーヘマトキシリンは、診断用臨床試料のパラフィン切片の染色に広く使われている色素溶液であり、市販品として低コストかつ安定的に供給されていることや、廃液も安全性が高いなどの利点がある。

一方、酢酸ウランは、国際原子力機関による「電離放射線に対する防護および放射線源の安全に関する国際基本安全基準」(BSS)において具体的な免責レベルが定められており、国際的にも新たな規制が法制化されつつあることから、研究チームでは、今回の研究成果によるマイヤーヘマトキシリンと鉛の二重染色は、試薬の購入、取り扱い、使用、保管、廃液処理などの面で放射性物質である酢酸ウランを用いた染色法に代わる有用な手法になることが期待されるとしている。