Slack Japanは5月17日、同社において今年最大のイベント「Slack Frontiers Japan」を開催した。同イベントは、オンライン/オフラインのハイブリットで開催し、本稿では基調講演「Digital HQで実現する最高の働き方」を紹介する。

対面とリモートの二元論からの脱却

冒頭、セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏は日本における働き方について触れた。

  • セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏

    セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏

同氏によると、1960年代は専用デスク、1990年代はフリーアドレス、2000年代はレストランやスポーツ施設などを併設したキャンパス型オフィスへと変化し、働く場所が考えられていたと指摘。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いすべてが変化し、物理的に職場にアクセスできなくなり、短期間でリモートワークに移行するなど、デジタルスペースと物理的なスペースの逆転が起こり、多くの人が場所にとらわれずに働くようになったという。

  • 日本における働き方の変遷

    日本における働き方の変遷

同社が行ったグローバルの調査では、71%がリモートワークを含めたハイブリッドワークを希望しており、61%が対面での会話が懐かしいと実感したほか、78%がリモートワークはエンゲージメントが高いと答えた一方で、出社している従業員もエンゲージメントが高いと回答した。

このような結果を踏まえ、佐々木氏は「従業員の半数以上があることを言って、同じく半数以上の人は別のことを言っており、この3つのグループには明らかに重複がある。しかし、互いに矛盾しているわけではなく、仕事を対面とリモートに分ける二元論から脱却するときが来たのかもしれない。理想の職場というのは、人々がどこかに集まるのではなく、組織や集団として共有しているミッションの中で自分もその一員であるという意識を感じるか否かで決まる。多様な働き方の選択肢が増える中で、従業員のニーズを満たすためには物理的なオフィスだけでは限界がある。そこで重要になるものが互いにつながることができ、柔軟かつインクルーシブなスペースに誰でも参加してビジネスに貢献できる職場環境だ。それが“Digital HQ”だ」と話す。

同氏は、組織においてDigital HQを実現できれば対面とリモートの二元論から脱却できるとも話しており、どこにいるのか関係なく誰でも実力を発揮し、高いエンゲージメントが可能だからだという。同社が提唱するデジタル化の拠点であるDigital HQは「組織の壁を超えた協業を促進」「働く場所や時間を柔軟に」「業務の自動化で生産性アップ」という3つの要素を備えているという。

  • Digital HQが備える3つの要素

    Digital HQが備える3つの要素

佐々木氏は「スピーディ、柔軟、包括的なデジタル空間で同僚、顧客、パートナー、システムとつながり、生産性の高い働き方を実現することがDigital HQで働くということだ」と、改めて強調していた。

急速に変化する昨今ではアラインメントが重要

続いて、米Slack CEO 兼 共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏がDigital HQにより、組織がどのように働き方を変革していくのかについてビデオメッセージを寄せた。

はじめに、バターフィールド氏は「われわれは日ごろからアラインメントを重視しており、これは全員の目指す方向を揃えるという意味だ。多くの組織では、その実現のために労力を費やしており、目指す方向が揃っていないとエネルギーを注いでも意味がなく、費やした労力が無駄になってしまう。しかし、目指す方向が揃っていれば前に進むことができる」と述べた。

  • 米Slack CEO 兼 共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏

    米Slack CEO 兼 共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏

同氏によると、これまでどの組織にも共通する根本的な問題を抱えており、それがアラインメントだという。急速に変化する昨今ではアラインメントは重要となり、新型コロナウイルスの感染拡大やアメリカのインフレ、ヨーロッパにおける軍事進攻をはじえめ、この数年で世界がどれほど変わるのかを身をもって体感していると指摘。

これらは組織と従業員にとって信じられないほど大きな負担となっており、グローバリゼーションの進展に伴い競争は激化し、テクノロジーも進化する中で組織が素早く対応するためには全員の方向性を常に揃え直せる状態が欠かせないとしている。

バターフィールド氏は「こうしたアジリティの実現においてSlackが果たす役割は、Digital HQとして機能することだ。Digital HQは単なるマーケティング用語と考えられがちだが、2020年3月を想像すれば出張や会議室での会議、出社、会食など、対面でのやり取りが可能であったとしてもソフトウェアが使えなくなっていたら大半のビジネスは消えていた。生産性とコラボレーションを促すデジタルインフラであるDigital HQがあったからこそビジネスを継続できた。コロナ禍で、その重要性は大きくなり、アジリティは常に変化に適応する“改善”とも呼ばれている」と主張した。

アラインメントを生み、アジリティを実現する強力なツール

Slack、すなわちDigital HQの基盤はチャンネルであり、顧客、拠点、事業部門、プロジェクト、チーム施策ごとに作成でき、すべてはチャンネル作成からスタートする。チャンネルを作成すればSlackに組織の構造が反映され、質問や最新情報の共有などを可能としており、同氏は「これによりアラインメントを生み、アジリティを実現する強力なツールだ。物理的なオフィスに対するDigital HQのメリットは革新が容易であるという点だ」と語る。

というのも、Slackでは新しいインテグレーションやチャンネルを構築してチャンネルの使い方や連携方法を定めることができることから、個人やリーダー、組織全体が連携するための強力なツール、手段になるという。そして、この数年の状況をふまえて連携方法も見直しており、その1つとしてSlackコネクトを挙げている。

具体的には。2つの組織間をつながけるだけでなく、セキュリティや検索性が向上したことに加え、社外とのコミュニケーションを把握しやすくなっている。また、Slackの動画や音声のレコーディング、共有機能のクリップと、チャンネルに参加するメンバー同士が音声ミーティングを行うハドルミーティングを導入している。

さらに、1日あたり数千万人が利用し、ユーザー企業により1週間で00万ものインテグレーションが作成されていることから、プラットフォームの強化にも注力しているほか、コードをホストして実行できるようになっており、Slack上にデータを保存してワークフローとアプリのエンドユーザー、ソフトウェア開発者、社内のIT部門、ビジネステクノロジーグループ間のコラボレーションを進められるという。