そこで研究チームは今回、SPring-8の高強度の高エネルギーX線を活用することにより、高圧その場環境下において精確にSiO2ガラスの構造を測定する手法を開発。開発された手法を用いて実施した実験結果に対し、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせることで、高圧下におけるSiO2ガラスの構造情報を得ることに成功したとする。
理論研究により提案されている構造パラメーター「z」(あるSi原子から5つ目に近いSi原子までの距離と4つ目に近いO原子までの距離の差を表すパラメーター)を用いた解析により、この構造パラメーターzの分布が高圧下において二峰性分布を示すことが確認されたという。
また、実験により得られた構造パラメーターzの二峰性分布は、SiO2液体の理論研究において報告されているものと良い一致を示していたとする。SiO2ガラスにおける構造パラメーターzの分布は、低圧下においては高いz値のみ1つの分布を示すのに対し、高圧下においてはz値=約1.7Åの分布が増加し、二峰性分布を示すという。
さらに、低圧下のSiO2ガラスにおける高いz値の分布は、近接の4つのSi原子が四面体構造を成す構造を示しており、5つ目に近いSi原子は第一層の4つのSi原子とは大きく離れた位置に存在していることが示されたが、この構造はSiO2液体の理論研究により報告されているS状態の構造と同じ構造だという。
一方、高圧下において出現するz値=約1.7Åの分布は、5つ目のSi原子が第一層の4つのSi原子と同じ位置まで接近し、四面体性が失われた乱れた構造を表しているとする。SiO2ガラスは1気圧から低圧下では四面体性の高いS状態構造から主に構成される一方、高圧下では四面体性が崩れ、S状態構造の割合が大きく低下することが高圧下におけるSiO2ガラスの異常特性の構造的起源となっていると考えられるとしている。
なお、研究チームでは、今回開発された実験手法について、液体・非晶質物質の構造を高圧・高温その場環境下で測定することを可能にするものであり、幅広い科学・技術分野の実験研究に貢献すると期待されると説明している。