熊本大学の先進マグネシウム国際研究センター(MRC、センター長:河村能人教授)は、熊本県商工労働部と包括的連携協定を結んだ上で、熊本県内のマグネ合金・アルミ合金などを成形・加工する企業群と「くまもと軽金属コンソーシアム」を設立したと発表した。

くまもと軽金属コンソーシアムは、マグネ合金・アルミ合金などの軽金属製部品の利用拡大・振興を図るため、「共創の場」として、マグネ合金・アルミ合金製部品の生産技術の高度化を図ることを目指すとしている。

同コンソーシアムに参加する企業は熊本県内に本社を置く、不二ライトメタル(長洲町)、合志技研(合志市)、ヤマハ熊本プロダクツ(八代市)、YKK AP九州製作所(八代市)、九州横河精機(菊池市)、九州エフ・シー・シー(宇城市) および、藤岡エンジニアリング(岡山県真庭市)と本田技研工業熊本製作所、YKK APなどと公表している。

この共同研究開発を進める中心メンバーのMRCセンター長の河村教授※1と河村教授が研究開発したマグネ合金の事業化を進めているMG Port代表取締役の原豊氏の2人に、「くまもと軽金属コンソーシアム」が目指すオープンイノベーション志向の地域連携プロジェクトの概要などについて伺った。

  • 河村能人教授

    MRCセンター長の河村能人教授

  • MG Portの原豊 代表取締役

    MG Portの原豊 代表取締役。MG Portは開発したマグネ合金の用途開発のために設立された熊本大発のベンチャー企業

--「くまもと軽金属コンソーシアム」が目指すものを教えてください。

河村教授と原代表取締役:マグネ合金・アルミ合金を中核とした軽金属材料などの生産技術の高度化を目指します。

具体的には、マグネ合金・アルミ合金の生産技術のモニタリング技術を高度化し、生産DX(デジタルトランスフォーメーション)技術の開発・高度化、生産プロセス技術の高度化、マグネ合金などのリサイクル技術の高度化などです。

そして、この生産技術の高度化を図るための共創の場を設けることを目指しています。

--くまもと軽金属コンソーシアムでは具体的にどういった組織で、どのように開発を進めるのでしょうか。

河村教授と原代表取締役:くまもと軽金属コンソーシアムでは、分科会を設けます。

ダイカスト・射出成形分科会(座長は熊本大大学院先端科学研究部(工学系)の小林牧子教授)、押し出し・プレス加工分科会(座長は同じく小林牧子教授)、アルミ高度循環分科会(座長はMRC 形質制御分野の安藤新二教授)、摩擦攪拌接合分科会(座長は熊本大大学院自然科学研究科 機械知能システムの寺崎秀紀教授)を設ける計画です。

  • 「くまもと軽金属コンソーシアム」の組織図

    「くまもと軽金属コンソーシアム」の組織図。会長は熊本大 大学院自然科学研究科 物質生命化学専攻の里中忍 教授が務める

各分科会は、調査研究、実証実験、実機展開とステップを踏んで技術開発を進めていく予定です。

ダイカスト・射出成形分科会の座長を務める小林教授は、ニオブ酸リチウムゾルゲル複合体を用いた高温超音波センサを開発し、その事業化を進めてます。分科会では、不良モニタリング技術を開発し、ダイカストや射出成形の技術開発を深めていく計画です。

同様に押し出し・プレス加工分科会でも、小林教授は不良モニタリング技術を開発し、押し出し加工、プレス成型加工の技術開発を深めていく計画です。不良モニタリング技術の開発では、センサ出力を画像解析化し、インライン検査体制の実現を目指します。

アルミ高度循環分科会座長の安藤教授は、アルミの高度循環システムを構築する事業化を進めます。

摩擦攪拌接合分科会座長の寺崎教授は、異材接合技術の開発を進めます。異材接合技術として、摩擦攪拌接合技術の実用化を図ります。

  • 各分科会の活動予定内容

    各分科会の活動予定内容

--共同開発成果の管理はどのように行うのでしょうか。

河村教授と原代表取締役:成果の管理として、特許などの「知的財産権取り扱い規定」の案をつくり、共同研究する企業の方々と管理・運営していく予定です。

この規定の下で、特許、データベース、ノウハウ、プログラムなどを管理・運営していきます。

また、くまもと軽金属コンソーシアムに参加した企業の方々と、熊本大に共同研究講座を設置する計画を進めていく予定です。

文中注釈

※1河村能人教授は、新型マグネ合金の開発などの実績を有する。直近の研究開発成果については「熊本大MRC、軽量・高強度などのマルチ機能を持つ新型マグネ合金を開発」に記載