そこで今回の研究では、若い成人男性を対象に、室内照度を200ルクス以下に設定した時間隔離実験室での15日間の生活による実験が行われることにしたとする。

内容は、実験開始から2日間は1日3食を決まった時刻に取り、その後、食事回数を1日1回に変更し、決められた時刻に食べる制限食事条件群と食事時刻を被験者自身で決める自由食事条件群の2つの条件群に分け、9日間1日1食スケジュールで生活するというもので、その後、再び食事回数を1日3回に戻し、食事時刻は被験者自身が決定する形で進められた。

実験中は、生物時計の指標として、睡眠覚醒リズム、深部体温リズム、メラトニンリズムが測定された。それに加え、動物実験で報告されている予知行動が食事に関連するホルモンに見られるのかどうかを検討するため、コルチゾル、インスリン、グレリン、レプチンといったエネルギー代謝に関わるホルモンの測定も行われた。

1日1回の食事時刻を固定した制限食事条件では、多くの被験者の睡眠覚醒リズムは24時間と区別できない周期を示し、位相後退が阻止されたとする。ただし1日1食の場合でも自由食事条件では、ほとんどの被験者で睡眠覚醒リズムは24時間より長い周期が示されたという。

一方、深部体温、メラトニン、コルチゾルリズムは1日1食スケジュールでは24時間より長い周期が示されたとするほか、動物実験で見られる食事時刻に対する予知行動は、今回調べたホルモンでは観察されなかったという。

  • 隔離実験室内での睡眠覚醒リズム、メラトニンリズムピーク時刻、深部体温の低体温相の典型例

    (A)隔離実験室内での睡眠覚醒リズム、メラトニンリズムピーク時刻、深部体温の低体温相の典型例。(B)1日1食スケジュール前後の睡眠覚醒リズム指標である睡眠中点と概日リズム指標であるメラトニンピーク時刻、深部体温最低値時刻の平均値と標準偏差。p<0.05、*p<0.01。1日1食スケジュール前の平均値に対する統計学的に有意に異なることを示す (出所:北大プレスリリースPDF)

なお、今回の研究成果について研究チームでは、ヒトの生物時計の構造と機能の全容解明に寄与するものだとするほか、生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害や概日リズム障害を予防する行動指針の作成に寄与することが期待されるとしている。