島根大学は2月18日、遺伝子で決まる朝型と夜型の人間それぞれの身体活動量を測定することで、これまで相対的に活動量が低いとされてきた夜型も、実は平日の活動量には差がないことを明らかにしたと発表した。

同成果は、同大 人間科学部身体活動・健康科学コースの宮崎亮 准教授、京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室の坂根直樹 室長、金沢大学 医薬保健研究域医学系の安藤仁 教授、岡山県立大学情報工学部の綾部誠也 教授、大下和茂 准教授、九州女子大学家政学部の濵嵜朋子 教授、九州共立大学スポーツ学部の樋口行人 教授らによるもの。詳細は、英文論文誌「Physiology & Behavior」(オンライン版)に掲載された。

ヒトには「朝型タイプ」「夜型タイプ」があり、その違いの約半分は、遺伝的(先天的)に規定されており、「時計遺伝子」がその規定遺伝子であり、その個人差である時計遺伝子多型であることが知られている。

今回の研究では、夜型20人と朝型61人の学生を対象に遺伝子多型を採取するとともに、被験者の日常における客観的な身体活動量を1時間刻みで詳細に分析し、身体活動量と、時計遺伝子多型タイプ(朝型/夜型)との関係を1週間にわたって分析したもので、その結果、時計遺伝子多型が夜型タイプの者と朝型タイプの者とで、平日の活動量は変わらなかったものの、土曜日だけは、夜型タイプの者の活動量が朝型タイプのそれと比べて、1日中有意に低値を示したという。

この結果について研究チームは、身体活動に関する遺伝的影響は、平日には学校などの社会的制約にあるためマスクされて発現しにくく、時間が自由になる週末(特に、もっとも自由時間のある土曜日)において現れやすくなることを示唆したものとしており、これまでの夜型の活動量は朝型より低いとする先行研究は24時間程度の観測にとどまっていたためこうした社会的な影響は明らかになっていなかったものと考えられるとしている。研究チームでは、日曜昼には、月曜からの社会的な生活に戻る準備を始め、身体活動量は朝型の人間と差のない状態に戻り始めているように見えるとしている。

さらに、ベストタイムは人ごとで異なるため、今回の結果だけで決めつけるわけにはいかないとしており、例えば、夜型遺伝子を持つ子どもが土日に朝寝坊しているのに対して、親が叱ることはその子に無理を強いている可能性があるとしている。そのため、子どもの個性を把握して、個性に応じた接し方ができると良いかもしれないともしている。

加えて、今回の研究では、被検者に普段の起床時刻や就寝時刻、主観的に自認するのは朝型か夜型かといった質問に答えてもらう形で行われたが、こうした主観的自認や生活パターンと遺伝子的なタイプとは相関がないことも判明したとのことで、勉学やスポーツ、ビジネスに取り組む場合、主観的自認だけなく生まれつき持っている朝型か夜型の個性も考慮して、個人のベストタイムに取り組むと最善のパフォーマンスを発揮できることにつながる可能性があるとしている。

  • 島根大学

    夜型20人と朝型61人の学生それぞれの活動量平均値をプロットしたもの。土曜日と日曜日午前は、夜型の活動量が朝型よりも低下することが確認されたが、それ以外の時間帯は、活動量に差はないことが判明した(平日は金曜日と月曜日だけが図示されているが、火曜日から木曜日も同様に差がなかったという)