そこで研究チームは今回、高強度レーザーパルス光を固体に照射して瞬間的に溶融・蒸発・プラズマ化させる「レーザーアブレーション」を用いて微粒子を作製する技術を、超流動ヘリウムという極低温の流体中に導入することで、半導体のシリコンナノ粒子を用いて量子渦を可視化することに成功したとするほか、レーザーアブレーションによって超流動ヘリウム中で作製された大量のシリコンナノ粒子が、量子渦の中心軸上に捕捉され整列することが明らかにされたという。

  • 半導体シリコンナノ粒子による量子渦の可視化の模式図

    半導体シリコンナノ粒子(赤い丸)による量子渦の可視化の模式図。量子渦の中心軸上にナノ粒子が捕捉され整列する (出所:大阪公立大Webサイト)

また、ナノ粒子群の様子を観察することで、量子渦の再結合現象を捉えることにも成功したとする。2本の量子渦が接触した瞬間に、互いのつなぎ変えが起き、その後、急速に反発し遠ざかっていくというものが、再結合現象だが、実験的に観察された再結合の振る舞いは、理論予測と一致することが確認され、今回の研究で可視化している対象が確かに量子渦であることが明確に示されたとする。

  • 量子渦の再結合の模式図

    量子渦の再結合の模式図。接触した2本の量子渦が互いと繋ぎ変えた後に、急速に離れていく (出所:大阪公立大Webサイト)

今回の研究成果について研究チームでは、これまで用いられてきた固体水素微粒子とは異なり、光との相互作用が強い半導体微粒子が利用可能であることから、光を用いた量子渦研究への新しい道筋が拓かれるとしているほか、量子渦に捕捉された微粒子群は量子渦と強く相互作用し合うため、たとえば微粒子を媒介として、光を用いて量子渦を捕捉・自由に操作するような研究が可能になることが期待されるともしている。