そこで研究チームは今回、25個のホットジュピターについて、その大気特性を調べるため、ハッブル宇宙望遠鏡の約600時間、スピッツアー赤外線宇宙望遠鏡の約400時間、合計1000時間以上に及ぶ観測データアーカイブの再解析を実施。その結果、25個のホットジュピターすべてで2次食が観測されていたことが判明したという。2次食は、地球から見て中心星の後ろを系外惑星が通過することをいい(惑星が中心星の前を通過するときは1次食)、その際の中心星の光度が見かけ上、かすかに減少するのを分光観測することで、惑星大気の成分や温度の鉛直分布を推定することを可能とする。
今回の研究では、この2次食が注目され、独自に開発された解析法の大気リトリーバル法を適用することで、それぞれの惑星大気成分や温度分布の推定が行われた。その結果、ホットジュピターの特徴量について、いくつかの明確な傾向や相関が見出されたという。
たとえば、今回の半数以上のホットジュピターでは高層の大気が低層の大気よりも高温になる「温度逆転」が生じていることが導き出されたとするほか、温度逆転が見られる惑星の大気には、酸化チタン(TiO)や酸化バナジウム(VO)、水素化鉄(FeH)、ヒドリド(H-)などの分子が含まれていることも明らかにされた。これらの分子は高温でしか維持されないことから、惑星大気中の分子が中心星の光を吸収して高層の大気を加熱し、温度逆転が生じていると推定できるという。
また比較的低温の大気については、H2Oが検出される集団と、H2Oが検出されない集団があることも判明したとする。後者の集団については、大気が炭素を比較的多く含むため、化学的にH2Oが生成されないことが示唆されるという。ほかにも、これまでに個々の惑星の特徴づけから示唆されていたことを、惑星集団の特徴づけによって検証または反証できたとしている。
なお、研究チームでは、今回の研究成果を踏まえ、2021年末に打ち上がったジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、2029年に打ち上げ予定のアリエル宇宙望遠鏡を活用することで、より詳細に調査・検証されることが期待されるとしており、そのときであっても、今回行われたような惑星集団の特徴づけは有用であり、多様な惑星の特徴や形成・進化を理解する上で重要なアプローチになるだろうとしている。