そこで研究チームは今回、ネコが日常生活の中でヒトの発話を理解しているのかを明らかにするために、同居するほかのネコやヒトの名前と、そのネコやヒトの顔との対応を理解しているのかを調べることにしたという。

具体的には、乳幼児や動物の研究で用いられる、期待とは異なる事象が起きると、その事象を長く見ることを利用し、言葉を発することのできない動物や乳児が何を期待しているのかを調べる心理学的手法である「期待違反法」を用いて2つの実験が行われた。

1つ目の実験は、ネコカフェのネコと3個体以上で飼育されている家ネコを対象に、モニターの前にネコを座らせ、同居するネコAの名前を4回再生した後に、ネコAの画像かネコBの画像が呈示。もしネコがその個体の名前を聞いて顔を予測するのなら、予測とは不一致の画像を長く見ることが予想された。実験の結果、ネコカフェ群では一致と不一致の画像を見る時間に差はなかったが、家庭で飼育されているネコでは差が見られ、不一致の画像を長く見ることが確認されたとする。

2つ目の実験は、家庭のネコのみを対象とし、同居するヒト家族の名前を認識しているのかについて、1つ目の実験同様の手法を用いて、家族の名前と顔画像をモニターにて再生して刺激を与えたところ、全体としては条件間に差は見られなかったが、同居する家族の数、あるいは飼育期間が長いほど、不一致の画像を見る時間が長くなることが確認されたという。

研究チームでは、2つ目の実験から、ネコはヒトとの日常生活の中で名前を呼ばれているのを聞き、その名前の人物が反応するのを観察し、名前と人物との関連を学習している可能性が示唆されたと説明するほか、これらの2つの実験結果から、ネコは日常生活の中で、少なくともほかの個体の名前を認識していることが示されたとしており、そして今回の研究成果について、ネコがヒトの発話とその対象物の関連づけを学習していることを示したものとなるとした。

ネコはイヌと比較するとそっけなく、ヒトとのコミュニケーションに関しても淡泊であると考えられている。しかし今回の研究から、ネコもヒトが誰に対し、どのような名前を使って呼びかけ、また呼びかけられたネコ(ヒト)が応答するのか、といった社会的なインタラクションを観察している可能性が示されたことから、研究チームでは今後、どのようにネコが名前と個体(人物)の顔の対応を学習していくのかを調べていきたいとしている。

  • ネコは日常生活の中で、共に暮らすヒトの顔と名前を理解していく

    ネコは、ヒトとの日常生活の中で、特に訓練せずとも、ある個体の名前とその個体の顔との対応を学習していることが今回の研究で確認された (出所:京大プレスリリースPDF)