中国の宇宙船「神舟十三号」が2022年4月16日、3人の宇宙飛行士を乗せ、地球への帰還に成功した。
3人は昨年10月に打ち上げられ、建設中の「中国宇宙ステーション(CSS)」へ飛行。中国にとって最長となる半年間の長期滞在ミッションをこなした。
今後、CSSの増築のほか、6人体制での滞在なども計画。中国の有人宇宙計画は順調な歩みをみせている。
CSSと神舟十三号
中国宇宙ステーション(CSS)は中国の有人宇宙ステーションで、中国有人宇宙飛行プロジェクト弁公室が運用している。
2021年4月29日に最初のモジュール「天和」が打ち上げられ、今後、居住区や実験室などのモジュールを続々と打ち上げて結合させ、2022年末までの完成を目指している。完成すれば、かつてソビエト連邦/ロシアが運用していた「ミール」宇宙ステーションに匹敵する大型の宇宙ステーションとなる。
2021年6月17日には、CSSに向けた初の有人飛行ミッションである「神舟十二号」が打ち上げに成功。3人の宇宙飛行士が3か月間滞在し、ステーションの運用や宇宙実験などを行い、9月に帰還した。
今回の神舟十三号ミッションはそれに続く滞在ミッションで、また初の半年間の滞在を目指したものだった。
ミッションには、ザイ志剛氏、王亜平氏、葉光富氏の3人の中国宇宙飛行士(Taikonaut)が参加。ザイ氏と王氏は2回目の宇宙飛行、葉氏は初飛行だった。
神舟十三号を搭載した「長征二号F」ロケットは、2021年10月16日に打ち上げに成功。約6時間半後にCSSの天和モジュールにドッキングし、3人の長期滞在が始まった。
3人の飛行に先立ち、9月には無人補給船「天舟三号」が打ち上げられ、CSSにドッキングしていた。CSSに到着した3人は、天舟三号に搭載されていた物資の搬出などから始め、滞在ミッションをこなしていった。
とくにザイ氏と王氏は船外活動も実施。11月と12月に計2回行い、今後のモジュールの追加に備えたロボット・アームや、カメラの取り付けなどを行った。
そのほか、無人補給船「天舟ニ号」を手動で操縦する試験や、宇宙授業、また米国の中国大使館との交流イベントなども行われ、イーロン・マスク氏も参加している。
こうしたミッションをすべてこなしたのち、4月16日1時44分(日本時間、以下同)、3人を乗せた神舟十三号がCSSから分離した。単独で約9時間飛行し、やがて逆噴射をかけて軌道から離脱。宇宙飛行士が乗ったカプセルは大気圏に再突入した。
そしてパラシュートを開いて、中国北部の内モンゴル自治区にある東風着陸場に着陸した。
3人の宇宙飛行士は、カプセルから出てくるのにやや手間取ったものの、健康状態は正常だという。その後、飛行機で北京にある中国宇宙飛行士科学研究訓練センターに向かい、今後リハビリを受けることになっている。
なお、神舟十二号ではCSSからの分離後、地球を約11周してから帰還したが、今回は約5周で帰還する「急速帰還モデル」が採用された。これは、事前のプラン立案やシミュレーションの繰り返しにより実現したもので、宇宙飛行士の負担軽減などに役立つとしている。今後のミッションでは、この急速帰還モデルが標準になるという。
神舟十三号のミッション期間は182日となり、中国の有人宇宙開発の中で最長を記録した。
なお、王氏には5歳の娘がおり、彼女もまた半年もの間母親のいないことに耐えるという大きなミッションを成し遂げた。その彼女は2月に行われたCSSとの交信イベントの際、「お母さん、星を取ってきて」とお願い。そして今回帰還した王氏は、北京で娘から花束とともに歓迎を受けた際、「ただいま! たくさんの星を持って帰ってきたよ」と声をかけるという、心温まる出来事があった。
神舟十三号のクルー
ザイ志剛
1966年生まれの55歳。中国人民解放軍戦略支援部隊を経て、1998年に中国初の宇宙飛行士候補に選抜された。
2008年に「神舟七号」で初の宇宙飛行を実施。劉伯明宇宙飛行士とともに、中国初の船外活動に成功した。
今回が2回目の宇宙飛行で、ミッションのコマンダーを務めた。
王亜平
1980年生まれの42歳。中国人民解放軍戦空軍で輸送機のパイロットを務め、四川大地震の救助ミッションなどで活躍。その後、2010年に宇宙飛行士候補に選ばれた。
2013年に「神舟十号」ミッションで初の宇宙飛行を実施。中国人女性として2人目の宇宙飛行士となった。同ミッションでは宇宙ステーション実験機「天宮一号」に約2週間滞在し、CSS建造に向けた実験や訓練などを行った。今回が2回目の宇宙飛行となった。
葉光富
1980年生まれの41歳。中国人民解放軍戦空軍で戦闘機パイロットを務めたのち、2010年に宇宙飛行士候補に選ばれた。訓練を経て、今回が初の宇宙飛行となった。
脚注:*1 ザイは「羽」の下に「隹」