ディスプレイ市場調査会社である米Display Supply Chain Consultants(DSCC)が、2021年のFPD製造装置メーカーの売上高を集計したところによると、同年のFPD製造装置市場は、前年比16%減の131.8億ドルにとどまったという。TFTアレイ工程向けはそこまで下落はしなかったものの、有機EL(OLED)向けの出荷が落ち込んだという。
売上高上位10社を本社所在国別に見ると、日本が5社、韓国が4社、米国がApplied Materials(AMAT)の1社という内訳になるという。また上位25社にまで広げると、韓国が12社、日本が9社、米国が2社、台湾も2社となり、韓国の中小FPD製造装置メーカーの奮闘が垣間見えるという。
また、韓国を抜いてディスプレイ生産大国となりつつある中国だが、目立った中国資本のFPD製造装置サプライヤはまだ登場していない模様である。
業界トップは、半導体装置同様のAMATで、同社は、ディスプレイ製造用CVD装置で独占に近いシェアを堅持しているほか、スパッタリング装置でも2016年以降で初めてアルバックを抜き首位に立った模様である。ただし、2022年には再びアルバックが首位を奪い返すとDSCCでは予測している。
売り上げ2位はキヤノンで、ディスプレイ製造用リソグラフィ分野でニコンと世界市場を2分しているキヤノン本体の売上高(約7.44億ドル)だけでも2位だが、子会社でOLED用真空蒸着装置で業界トップシェアのキヤノントッキの売上高(約5.40億ドル)を合算するとトップのAMAT同様10億ドルを超す売り上げ規模となる。
キヤノントッキの蒸着装置は、2021年に売り上げを大きく減らしたが、好調だった2020年の反動によるもので、同社が同装置市場のシェア80%前後を確保していることに変わりはない。また、スマートフォン(スマホ)向けフレキシブルOLEDへの次の投資をパネル各社が見極めている段階にあることも一部で影響しており、2022年も前年と同程度の売上規模になると予想されるという。
3位にも、ディスプレイ用露光装置で高いシェアを持つニコンが入るなど、日本企業が露光装置や真空蒸着装置といった主要工程でのシェアを確保し、ランキング上位を占める構図に変わりはないが、2021年は日本や台湾での生産能力増強に向けた投資がほぼ行われず、中国および韓国に限られたこともあり、エッチング装置を主力とする韓Inveniaが、同じくエッチング装置を手掛ける東京エレクトロン(TEL)の売上高を上回る結果となった。2022年もInveniaは攻勢をかけ続けるものとみられるという。
また、コーター&デベロッパーを主力とする韓Narae Nanotechも同装置市場でトップシェアを獲得した模様で、背景には韓国FPDメーカーでのアレイ工程での採用が増加したことがあるという。
企業ごとの市場シェア割合を見ると、1位のAMATであっても10%前後で、3位のニコン以下になると5%未満となっており、AMAT、ASML、Lam Research、TEL、KLAの上位5社で市場シェア7割を占める半導体製造装置業界とは対照的である。
なお、トップ25社を見た場合の日本企業は、11位以下だと13位にSCREEN、22位に芝浦メカトロニクス、24位に光洋サーモシステム、25位に日新電機がそれぞれ入っている。ただし、市場シェアは各社ともに1%以下となっている。
DSCCの共同創業者でアジア代表の田村喜男氏は「2022年は、Samsung Display(SDC)がRGB OLEDのG8.5による量産ラインの整備に取り組んでいるほか、BOEも年内に投資方針を固める方向にあるが、縦型蒸着装置の開発は最先端技術ということもあり、計画より半年程度遅れるとの見通しが出ている。装置各社も開発を急いでいるが、こうした進捗も今後の投資動向に影響を与えそうだ」と述べている。