文部科学省は、特色ある産学連携を強力に推進する有力大学として8大学を選出し、その8大学内に産学による「組織」対「組織」の大型共同研究を実施する体制として「オープンイノベーション機構の整備事業」を2018年度(平成30年度)から開始し、支援を行ってきた。

同事業の最終年度となる2022年度(令和4年度)に向けて、産学連携成果を公表・報告する講演会といった成果報告活動がこのごろ盛んになってきた。

オープンイノベーション機構整備事業を進めている大学とその担当領域は、東北大学が創薬領域、山形大学が有機材料領域、東京大学が医療機器領域などの8大学・領域であり、8大学はそれぞれ独自のオープンイノベーション機構といった組織を設けて、企業や大学部局(研究科や研究所)などとの大型の産学連携を進めている。

  • 文部科学省が2018年度に採択したオープンイノベーション機構整備事業の8大学

    文部科学省が2018年度に採択したオープンイノベーション機構整備事業の8大学

同事業の事例を公表する機会として、文部科学省は「オープンイノベーション機構の整備事業シンポジウム~産学連携における資金の好循環に向けて~」と題したシンポジウムを開催し、3月14日からオンデマンド形式のシンポジウムが、3月24日にはライブ配信でパネルディスカッションなどの講演会が開催される予定だ。

3月14日に公開予定のシンポジウムでは、オープンイノベーション機構整備事業の担当大学に選ばれた8大学の中の4大学の担当者がそれぞれの産学連携の成果などを解説する予定だ。

登壇が予定されているのは、東北大のオープンイノベーション戦略機構 統括クリエイティブ・マネージャーの内田渡氏、東京医科歯科大のオープンイノベーション機構は統括クリエイティブ・マネージャーの廣川和憲氏、早稲田大のオープンイノベーション戦略研究機構の統括クリエイティブ・マネージャーの中谷義昭氏が、大阪大のオープンイノベーション機構 統括クリエイティブ・マネージャーの森正治氏。これらの講演に先立って、日本工学会の高木真人理事がオープンイノベーション機構整備事業を進めた意義とその成果を解説する計画だ。

3月24日に開催される講演会では、「『資金の好循環』創出に向けたこれまでの歩みと今後の展開」と題したパネルディスカッションが行われる予定だ。「採択大学での取り組事例を紹介するとともに、大型の産学連携による持続的な『資金の好循環(知の価値付けと費用の適切な分担)』について議論したい」という。

なお、3月14日に公開されるシンポジウムは特設サイトに掲載され、誰でも見ることができる予定で、3月24日に開催予定の講演会は事前申し込みが必要で、締め切りは3月18日までの予定だ。

また、各大学でも報告活動が盛んで、東北大は3月1日に「東北大学オープンイノベーション戦略機構 シンポジウム2022」と題したオンラインの講演会を実施した。

  • 3月1日に開催された「東北大学オープンイノベーション戦略機構 シンポジウム2022」のWeb形式の講演案内

    3月1日に開催された「東北大学オープンイノベーション戦略機構 シンポジウム2022」

同講演会では、大野英夫 総長が大型の産学連携事例が進む意義を語った。続いて東北大オープンイノベーション戦略機構長である青木孝文理事・副学長(企画戦略総括担当、プロボスト)がB-U-B(企業-大学-企業)という形で進めている大型の産学連携を進める意義を具体的に説明した。

  • 青木孝文理事・副学長

    東北大学オープンイノベーション戦略機構長を務めている青木孝文理事・副学長(企画戦略総括担当、プロボスト)

青木理事・副学長は「データ駆動型の産学連携システムをつくり、東北大などの大学の研究成果を基にしたベンチャー企業(スタートアップ)を起業させるなどの態勢による新産業創造などの意味について」を解説した。そして、実際に東北大発のベンチャー企業を多数設けた実績を語った。

そして、東北大の新青葉山キャンパスに現在、建設中であり、2022年度には稼働する予定の大型放射光施設を利用する産学連携態勢について、その放射光施設建設の進捗など、稼働した際の科学・技術面での大きな意味合いを解説した。

続いて、東北大オープンイノベーション戦略機構の内田渡統括クリエイティブ・マネージャーが、当該支援事業の取組事例を具体的にいくつか紹介するとともに、産学連携による持続的な「資金の好循環(知の価値付けと費用の適切な分担)」について議論し、企業・アカデミアの領域を超えてより強固な連携を促すことを目的とする意味を説明した。