京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)は2月14日、オンラインでiPS細胞技術を使った再生医療の実現を目指すため「P.S. i LOVE YOU(ピー エス アイ ラブ ユー) PROJECT」を始動すると明らかにした。
2007年に京都大学iPS細胞研究財団 理事長の山中伸弥氏がヒトiPS細胞の樹立を論文で発表してから15年が経過しており、これまで多くの研究者の努力でiPS細胞を使った新しい治療法の研究開発が進展し、実用化への道をけん引する企業も出てきているという。
山中氏は「論文発表から15年が経過し、iPS細胞を患者さんのもとに届け、一般的な医療とするために努力を重ねてきたものの、研究者だけでは限界がある。産業界、企業の協力があって、はじめて患者さんのもとに新しい医療技術が届くことから、アカデミアと企業の間を橋渡しする必要がある」と意義を説明する。
続けて、同氏は「しかし、国立大学という制限上、CiRA_Fのために努力している人を正規雇用できないという大きな課題があるほか、製造した細胞が最終的に商用化されるのか否かという点においても常にリスクが存在する。この2つの大きな課題が私としても悩みの種だったが、CiRA_Fの設立で解決の方向に向かっている」と述べた。
CiRA_Fでは細胞製品の原料となるiPS細胞ストックやiPS細胞ストックを拡大培養したセルバンクを製造しており、iPS細胞ストック事業を非営利機関、企業との連携、情報共有を前提としたオープンイノベーション型の事業として進めることにより、知識・技術集積拠点となることを目指している。
山中氏は「iPS細胞ストックは、臨床応用のとして加齢黄斑変性やパーキンソン病、角膜疾患、心不全、膝関節軟骨損傷、網膜色素変性症、卵巣がん、亜急性期脊髄損傷をはじめとした病気に使われている」と説明する。
また、iPS細胞を使った治療が広く社会や医療に浸透することを目指し、品質、時間、コストの問題を解決する次世代iPS細胞の開発に取り組んでいる。
これらの目的を達成し、iPS細胞を活用した再生医療を当たり前の医療とするためには、大学、同財団、企業のが一体となり、さまざまな課題に取り組む必要があるという。
そこで、CiRA_Fが参画企業と現状について広く一般にも理解・関心を持つとともに、多くの人から応援してもらう機運を高めることを目指して、同プロジェクトを発足した。
京都大学iPS細胞研究財団 業務執行理事の高須直子氏は「iPS細胞ストックユーザー企業や再生医療の普及に向けた技術開発を行っている企業に声をかけた。多くの共通課題がある中で一体となって解決していけるコミュニティを形成し、社会全体から応援してもらいながら実用化を目指していける土壌を育てていく」と、プロジェクト立ち上げの目的について説明している。
同プロジェクトに参画する企業・グループは以下の通り。
- 旭化成
- キヤノン
- キヤノンメディカルシステムズ
- セルージョン
- クオリプス
- 大日本住友製薬
- ヘリオス
- 日立造船
- iHeart Japan
- iXgene
- メガカリオン
- オリヅルセラピューティクス
- レイメイ
- リバーセル
- リジェネフロ
- 積水化学工業
- 武田薬品工業
- サイアス
- ビジョンケア
なお、同プロジェクトの特設サイトを開設しており、同財団と19社の企業が、それぞれの想いや取り組みについて語る動画などを閲覧することが可能だ。