アンシス・ジャパンは2月15日、2月1日(米国時間)に発表した同社のエンジニアリングシミュレーションソフトウェアの最新版「Ansys 2022 R1」の新機能の詳細などを明らかにした。

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    Ansysのシミュレーションポートフォリオ (資料提供:アンシス・ジャパン)

アンシス・ジャパンのArea Vice President,カントリーマネージャーである大谷修造氏は、半導体チップから、コンポーネント、サブシステム、システム、そしてさまざまなシステムが組み合わさったシステム・オブ・システムズまで全体をシミュレーションでサポートしていくことを1つのゴールとしてAnsysは活動しており、買収した企業の技術も積極的に活用しながら、その実現を目指していると説明。こうした取り組みをスマートシティ、スマート農業、エンジニアリングなどさまざまな分野に広げていきたいとし、そうした取り組みを支えるのがAnsys 2022 R1の1つ1つの機能となるとした。

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  • システム・オブ・システムズ シミュレーションの概念。チップレベルのミクロなものから、複数のシステムを組み合わせた巨大なシステム・オブ・システムズまで幅広くシミュレーションでサポートしていくのが現在のAnsysの目指すところの1つとなっているとする (資料提供:アンシス・ジャパン)

Ansys 2022 R1のハイライトの1つとなるのが、光学シミュレーションのポートフォリオとしてZemaxが追加されたこと。これによって、Lumericalによるマイクロスケール、Zemaxの物理スケール、SPEOSによるマクロスケールといった包括ソリューションを提供することが可能となり、これにより各エンジニアのワークフローが効率化され、迅速かつ最適な光学設計が実現できるようになることを期待されるという。

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    Ansys 2022 R1のハイライトの1つ。光学シミュレーションのポートフォリオ拡充 (資料提供:アンシス・ジャパン)

また、機能としては15分野70以上の製品がアップデートされ、顧客ニーズに対応して、各業界特有アプリに対応するワークフロー構築支援などが可能となったほかクラウド対応強化により、高速かつ高精度シミュレーションの実現が可能となったとする。

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    Ansys 2022 R1の機能アップデートなどの概要 (資料提供:アンシス・ジャパン)

例えば、日本市場における顧客と関係性が強い自動車分野としては、 Fluentのバージョンアップにより、電動化の核となるバッテリーソリューション、自動車の重要な要素である空力、電動化に伴う熱解析の強化といったニーズに対応する機能が追加・拡充されたとする。中でもFluent Multi-GPUソルバの提供は、GPUのパフォーマンスを活用することで、CPUでの演算に比べて7倍のハードウェアコスト削減効果と4倍の電力消費効率を提供するとしている(1024コアのCPUクラスタ、9600WとNVIDIA V100搭載サーバ、2400Wを比べた場合)。

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    Ansys Fluentのバージョンアップの概要 (資料提供:アンシス・ジャパン)

また、同じく自動車分野の最新トピックスである自動運転についてもIPG Automotiveとの連携により、Ansysの物理ベースのセンサシミュレーションAVxcelerateのセンサ設定のためのUIをIPG AutomotiveのCarMaker上で使用することが可能となり、これにより簡単にセンサシミュレーションを使った検証ができるようになったとする(センサシミュレーションを実行するには対応した3D環境モデルが必要だが、CarMakerで利用可能なライブラリデータもAnsysから提供するという)。

もう1つ、日本市場における顧客と関係性が強い半導体業界向けにも新機能が複数追加されている。例えばRedHawk-SC SigmaDVD(Dynamic Voltage Drop)を活用することで、従来のDVD解析ではアクティビティ・ベクタシミュレーションでのスイッチングカバレッジが5%程度に留まっていたものが、従来の手法と同じ時間で100%のカバレッジを確保することを可能としたことで、7nmプロセス以下の先端プロセスにおけるICタイミングやIRドロップなどに対応できるようになるとする。

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    Ansys 2022 R1における半導体開発に向けた新機能の概要 (資料提供:アンシス・ジャパン)

また、SeaScapeプラットフォームをベースにした新しい高速・大規模対応版Totemである「Totem-SC」では、大きなサイズのGDSデータに対応(同社では、通常のTotemを完全に置き換えるものではないと説明している)。トランジスタ数に対する容量制限がなくなり、数百億を超す規模のものでも数分で開くことができ、かつそうした大規模設計のEMIR解析を20~30%高速化することができるようになったとする。

さらに、これまでのPathFInderとは異なるSeaScapeプラットフォームをベースにした高速・大容量版ESD解析プロダクト「PathFinder-SC」を新たに開発。共通GUIを採用することで、ESD抵抗チェックやCD(電流密度)チェックなどを1つのGUI上で、高速に実行することができるようになったとする。

このほか、デジタルツインやMBSE(モデルベースシステムエンジニアリング)領域についても、ModelCenterの新機能として、モデリング言語SysMLによる設計ツールであるMagicDrawのSysML状態遷移図を実行し、システムの挙動を検証できる新たなビヘイビアモデル実行エンジンが搭載されたほか、新規プラグインによるAnsys HFSSやMinervaなどをワークフローに統合することが可能になったという。

加えて、注目が高まる宇宙分野に向けた機能として、Ansys EMA3D Chargeによる宇宙空間での衛星の帯電シミュレーションのほか、STK(Satellite Tool Kit)のアップデートでは3D CADモデルがインポート可能になったり、Ansysの物理ソルバとの統合が可能となったほか、大規模な衛星コンステレーションにも対応したという。

なお、クラウド分野については、これまでMicrosoft Azureとの連携を強調してきたが、新たにこれまでクラウドサービスプロバイダとして連携してきたAWSとの戦略的コラボレーションを進めていくともしており、これにより、より戦略的な製品開発などを進め、クラウド上でのHPCの拡張により、EDAやCAEなどさまざまなシミュレーションソリューションの促進を図っていく予定としている。

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    Ansysのクラウドベースのプラットフォームの概要 (資料提供:アンシス・ジャパン)