KDDIは2月15日、ドローンの社会インフラ化を目指すとして、日本航空(JAL)と運航管理の体制構築やビジネスモデルの共同検討に関する基本合意書を締結したことを発表した。さらに同日、新たな事業会社として設立した「KDDIスマートドローン」よりドローンの遠隔自律飛行を支援する「スマートドローンツールズ」の提供を開始すると発表した。
KDDIが開催した記者会見の中で、同社の執行役員である松田浩路氏は「2022年はドローンのレベル4(有人地帯における目視外飛行)が解禁される特別な年である。自立飛行可能なドローンの技術が起爆剤となり、物流や農業、警備、監視、測量などあらゆる分野でドローンが活躍するようになるだろう」と期待を述べた。
同社ではドローンの社会インフラ化に向けて、「モバイル通信」と「運行管理」の2点がカギになると見ている。
auブランドを運営する同社は、これまでも地上のモバイル通信網構築に尽力してきた。2020年12月の電波方に関する省令改正により上空利用が可能になったことを受けて、上空のモバイル通信も含めて可視化および最適化を進めているという。
他方、同社は空の運航管理についても以前から着手しており、約6年前からドローンサービス運用に向けた運行管理システムの開発を本格化している。しかし、今後多数のドローンが飛び交う世界が訪れることを想定するとドローン運用におけるルール整備や体制構築が必要だ。松田氏は「基礎固めが終了し、応用問題を解いていく段階に入った。JALはそのための強力なパートナーである」として、両社が協業に至った背景を説明した。
JALは組織構成や責任体制、業務手順などを包含したSMS(Safety Management System)を構築し、安全運航を実現している。不安全事象を安全情報データベースでリアルタイムに一元管理するなど、リスクの管理とその是正に取り組んでおり、これらのノウハウをドローンの安全な飛行に応用する予定だ。
JALの常務執行役員である西畑智博氏は「今後全国で複数のドローンが安全かつ効率的に運用できる環境を構築していく。地域のニーズに沿ってドローンを活用し、地域活性化や日々の暮らしを豊かにする新たなサービスの創出を目指す」と意気込みを話した。
両者は今後、短期的には離島地域におけるドローンを用いた新たなビジネスモデルの構築を目指す。さらに中長期的には、ドローンの運航管理・空域管理の運用制御を行う体制やビジネスモデルの検討を予定しているとのことだ。
KDDIの100%子会社として2022年1月27日に設立されたKDDIスマートドローンは、KDDIのドローン事業を引き継ぐ。2022年4月1日より事業を開始する予定であり、モバイル通信事業に長年従事してきた博野雅文氏が社長に就任する。
同社はより多くのユーザーへドローン活用を促すために、モバイル通信や運航管理システム、クラウドなど、ドローンの遠隔自律飛行に必要なツールをまとめた「スマートドローンツールズ」の提供を開始する。
同サービスの基本パッケージとして、ドローンの遠隔運用に必要な通信・運行管理・クラウドをセットで提供する「4G LTEパッケージ」は、1IDあたり月額4万9800円だ。なお、モバイル通信はデータ使い放題であり、クラウド保存容量は100ギガバイトまで対応する。同サービスにより、ドローンでのモバイル通信だけではなく、機体の遠隔操作や動画のリアルタイム共有などが可能になる。
また、クラウド保存容量の追加や高精度な測位、小型の気象センサー、導入サポートなどはオプションとして追加可能だ。スペースXのStartLinkを活用した衛星回線基地局やクラウド解析、パイロット派遣などのオプションも今後追加する予定だという。
加えて、モバイル通信の上空利用に最適なドローン専用モジュール「Corewing 01」を4月より提供する。同モジュールはドローンへの搭載を前提として開発されており、高いノイズ耐性により安定した通信を実現する。また、電波ログをモジュール内部に自動的に蓄積するため、常に上空の電波状況を可視化できるとのことだ。
博野氏は「KDDIスマートドローンはスマートドローンツールズの提供に加えて、物流や点検といった用途別のソリューションも提供していく予定だ。ニーズに応じたドローンサービスを機動的に提供し、ドローンの社会実装を進めたい」と述べて会見を結んだ。