リコーは2月15日、社会インフラ点検業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みの一環として、宮崎県と協同で、切土や盛土によって作られる人工的に作られた斜面である「のり面(道路土工構造物)」の点検に関するモニタリングシステムの大規模実証実験を2022年2月に開始すると発表した。同社が開発した「のり面モニタリングシステム」を用いて実施する。

宮崎県は安心安全なまちづくりのために1000カ所以上ののり面を人手で点検するなど、のり面の維持管理に関して先進自治体なのだという。今回の実証実験は同県とリコージャパンが締結している包括連携協定に基づき実施するものであり、同県が保有する人手による点検結果とモニタリングシステムで測定した結果を突合することで、両者はシステムの精度の確認や効率化の検証を進める予定だという。

  • のり面モニタリングの様子

「のり面モニタリングシステム」は複数のラインセンサーカメラやLiDAR(3次元計測システム)を搭載した車両で道路を走行するだけで、のり面を一度に撮影して3次元形状を計測し、ひび割れなどの変状を抽出するものだ。撮影データの解析に加えて、調書作成などの業務プロセスまでをデジタル化することで点検業務の効率化や省力化を支援する。

LiDARによって画像と同時にのり面の3次元形状を記録することにより、平面画像からだけでは分からない断面の形状も記録可能だ。そのため、浮きやはらみ出し(表面の盛り上がり)など、のり面の崩壊につながる可能性のある予兆を把握できるという。

  • 計測データのイメージ

のり面は道路を構成する主要な構造物であり、その数は膨大である。近年は風化や老朽化が進行し安全管理が社会課題となっており、平成29年に「道路土工構造物点検要領」が国土交通省から出されるなど、社会インフラであるのり面の維持管理のための点検が行われている。

特に日本は国土全体の約7割を山地や丘陵が占めており、多くののり面が全国に広がっている。従来は、のり面の点検を行う際に土木技術者が斜面に登り近接目視での確認を実施するが、高所や急斜面での作業が必要になる上、のり面の数や面積が膨大であり、人手と手間が必要という課題があった。

そこで同社は道路などの社会インフラの安全を保つために、一般車両に搭載した独自の撮影システムとAI(Artificial Intelligence:人工知能)をはじめとするデジタル技術を用いた低コストで効率的な点検の提案を進めている。これまでに路面モニタリングサービス、およびトンネルモニタリングサービスを提供しており、今回ののり面モニタリングは同社の社会インフラ点検サービスの第3弾にあたる。

  • AIを用いた画像処理のイメージ