昭和電工は、半導体材料の最適な配合探索にかかる時間を、量子コンピューティング技術を活用し、従来の数十年以上から数十秒に高速化可能であることを実証したと2月10日に発表した。
半導体材料は樹脂やフィラー、添加剤など多数の材料をさまざまな比率で配合し、それらの種類と量の配合を最適化することにより高性能化を図る。
同社が取り組んでいる半導体材料の配合の組み合わせは、理論上10の50乗を超える膨大な数が存在しており、従来のAI技術を用いて探索した場合、最適な性能の提示を得るには数十年以上必要だったため、理論上の組み合わせのうち一部だけを抽出して最適な配合の組み合わせを探索していたという。
こうした探索に要する時間の短縮のため、同社は富士通の高速情報処理技術である量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」に着目。
デジタルアニーラを活用するには統計力学の解析手法であるイジングモデルでの入力が必要で、昭和電工は、材料の複雑な配合条件から半導体材料の特性を予測できる独自開発したAIモデルを、イジングモデルで表現することに成功したという。
これにより昭和電工のAIモデルとデジタルアニーラとの連携を実現し、配合の種類と量を限定した条件下で探索を行う従来のAIモデルのみを活用した場合と比較して、探索時間を約7万2,000分の1、時間にして数十秒ほどに短縮でき、かつ半導体材料として約30%高い性能を実現する配合を得ることができるとしている。
なお、昭和電工は、同成果を同社グループのさまざまな素材開発に応用して開発を加速していくとのことだ。