北海道大学(北大)は1月13日、水と光のみを用いた水中結晶光合成(SPSC)という新たに開発した手法により、良質な界面からなる3次元半導体(ヘテロエピタキシャル)構造の作製に成功したと発表した。
同成果は、北大大学院 工学研究院 エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの渡辺精一教授、同・張麗華助教、北大 電子科学研究所のジェーム・メルバート助教らの研究チームによるもの。詳細は、材料科学および材料工学に関する学際的な分野全般を扱う学術誌「Applied Materials Today」に掲載された。
半導体の界面はデバイスの性能にかかわる要因であるため、さまざまな研究が行われてきた。そうした中、接合する側によらず、異種半導体界面において「フェルミ準位」が、エネルギーギャップ内の特徴的なエネルギー位置に固定されることが知られており、今回、研究チームは、その発現機構を解明に向けた研究を進める取り組みを行ったという。
具体的には、「水中結晶光合成(SPSC:Submerged photosynthesis of crystallites)」という水と光のみを用いて作製する低環境負荷な新たなナノ材料合成法を開発し、それを用いて「ZnO/CuO」(酸化亜鉛/酸化銅)のヘテロ接合半導体ナノ構造「nanoforest」(ナノフォレスト)が作製された。
界面原子構造と誘電率、光吸収(係数)の評価や、密度汎関数理論に基づく第一原理計算、紫外線-可視光-近紫外分光分析による吸光度の実測と比較検討などの結果、異種半導体(ヘテロ構造)界面による光機能の発現効果を解明することに成功したという。
なお、作製された3次元半導体デバイスは、特に可視光域での優れた光電流、発光ならびに光吸収などの光特性を示したとする。そのことから、発光素子や光機能を利用した半導体・エネルギーデバイス材料開発を目的とし、将来的には太陽光を利用する水と光を用いた持続可能な材料創製技術としての進展への寄与が期待されるとしている。