HACARUSは12月21日、新規材料を発見するための実験回数を従来の半分以下に削減も可能な「実験計画アルゴリズム」を開発したと発表した。同手法は、東京工業大学 物質理工学院の一中山亮特任助教および杉太郎教授らとの共同研究の成果を用いたものだという。

材料科学の分野では諸外国との競争激化を背景として、材料開発の効率化に向けて機械学習などAIの手法を活用した合成条件の最適化が注目されている。

学習に大量のデータが必要な「ディープラーニング」ではなく、わずかなデータからでもAIモデルを構築可能な技術「スパースモデリング」を活用している点が「実験計画アルゴリズム」の特徴だ。

  • 従来の半分以下の実験回数で目的の素材を探索できるという

4つの合成パラメータを調整する実験において、従来の手法では4つの合成パラメータをそれぞれ等しく扱い探索を行っていたが、今回開発したアルゴリズムでは、この4つのうち1つの合成パラメータについては材料特性の変化がほとんどない場合にその合成パラメータを探索の対象から自動的に取り除く。

これによって、実験総数を従来の2分の1程度に削減できるという。さらに、2つの合成パラメータが特性に大きな影響を与えない場合は実験総数を3分の1程度まで削減できることを確認したとのことだ。

これまでの材料開発においては、金銭および時間を削減するために、材料を研究する科学者の知識や経験に基づいて入力する合成パラメータを絞り込んでいたという。しかし、同手法では合成パラメータの吟味がそもそも不要となるため、効率的に実験回数が削減可能である。

過去の材料科学では、リニアモーターカーへの活用が期待される「超伝導体」の開発において研究者の常識や先入観を覆す予想外の発見(セレンディピティ)が話題となった。専門家の勘や経験によって合成パラメータを絞り込むのではなく、今回開発した手法でなるべく多くの合成パラメータを検討することで、人だけでは成しえなかった材料の開発にも期待できる。