TrendForceによると、供給不足からPMIC(Power Management IC:電源管理IC)の価格は上昇を続けており、2021年の汎用PMICの平均販売価格は前年比9.5%増の0.23ドルと、過去6年で最大の上昇幅となる見通しだという。
消費者向け電子製品、通信、FA機器、自動車など末端需要の増加が続いている上、製品の世代交代も重なり、世界中でPMICの使用量が増加していることが背景にあり、この供給ひっ迫は2022年上半期まで続く見通しだという。
PMIC市場の8割を占める大手企業群
PMIC市場は、最大手のTexas Instruments(TI)を筆頭に、Infineon Technologies、Analog Devices(Maxim Integratedを買収)、STMicroelectronics、NXP Semiconductors、onsemi、ルネサス エレクトロニクス(Dialog Semiconductorを買収)、Microchip Technology、ロームといった大手IDM、ならびにQualcomm、MediaTekといった大手ファブレスで80%を超す市場シェアを有している。
PMICの最大用途は家庭用電化製品であり、ノートブック、Chromebook、スマートフォン、テレビの需要は短期的には低迷しているが、PMIC需要は全体として増加傾向にあるため、一部の製品については依然として不足状況が続いているほか、QualcommやMediaTekは、ファウンドリのマチュアプロセスで生産委託を行っているが、生産能力が不足しているため、入手できる数量が制限される状況にあるという。
車載PMICのリードタイムは40~52週に
また、自動車市場の回復と電気自動車や自動車のエレクトロニクス化、先進運転支援システム(ADAS)の成長などにより、電源制御と管理および充電技術に対する需要が高まっている。さらに、車載ICは多くの検査に合格する必要と、ゼロ故障率の実現といった品質保証の必要があることなど、敷居が高く、IDM各社の車載ICの受注残は2022年末まで続いているという。フル稼働でも供給が間に合わないうえに、原材料不足などの要因が重なっていることなどから、PMICサプライヤ各社は、リードタイムを伸ばすことを発表。その結果、消費者向けICのリードタイムは12~26週、車載ICのリードタイムは40~52週となり、一部の製品については受注を停止する事態となっているという。
なお、TrendForceによると2021年第4四半期のPMIC需要も堅調に推移しており、全体的に生産能力の不足が続くとみられることから、IDMを中心としたPMICの価格は高止まりする見込みだという。TIが建設を進めている300mmファブ「RFAB2」が2022年後半に創業を開始する予定のほか、一部のファウンドリが8インチでの製造から12インチでの製造に移管する動きを見せているため、2022年の後半にはPMIC不足が解消される可能性が高くなるともしているが、今後の市場の変化には引き続き注意を払う必要があるともしている。