東邦大学は11月8日、ABO式血液型の違いが「ペロニー病(形成性陰茎硬化症)」のかかりやすさに関連することを明らかにしたと発表した。
同成果は、東邦大学医学部泌尿器科学講座の三井要造 講師、同 小林秀行 准教授、同 山辺史人 講師、同 中島耕一 教授、同 永尾光一 教授らによるもの。詳細は2022年1月1日付で雑誌「The World Journal of Men’s Health」にてオンライン発表されるが、現在Forthcoming Articleとして2021年11月3日より先行公開されている。
ペロニー病は、陰茎に発生するしこりによって勃起時に屈曲や痛みを生じる良性の病気だが、時に遺伝的傾向をもつと考えられており、手掌から指にかけてひきつれができる「デュピュイトラン拘縮」を合併することが知られている。その罹患率は5%ほどと考えられており、中高年に多く危険因子として高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、陰茎の外傷が指摘されているほか、いくつかの遺伝的要因が原因候補として提案されてきたものの、未だによくわかっていないという。
ABO式血液型は広く知られているが、近年の研究にて、血液型によって赤血球表面の抗原構造や、炎症に関与するサイトカインの量の違いなどから、がんや感染症、糖尿病、心臓病などの病気のかかりやすさに関連する遺伝的要因であると考えられるようになってきた。例えば、サイトカインに誘発される炎症反応は、ペロニー病の発生と進行に関連することも明らかになっており、そうした背景を踏まえ、研究グループは今回、ペロニー病とABO型血液型との関連性を実証する研究を行ったという。
対象は、ペロニー病患者202例とペロニー病以外の病気で手術を受けた患者の中から無作為に選択した対照者846例。対象者群のABO式血液型の分布は、O型29.1%、A型37.9%、B型23.2%、AB型9.8%と日本人の分布とほぼ同じとなったが、ペロニー病患者群では、O型37.6%、A型36.1%、B型14.9%、AB型11.4%と対象者群と比べO型の割合が高く、B型が低いことが判明。B型を比較対象として、ペロニー病発症のオッズ比を血液型ごとに計算したところ、A型は1.49、AB型は1.81、O型は2.02となり、統計学的にも有意差が示されたという。
ただし、ABO式血液型以外に生活習慣病や喫煙歴、陰茎外傷の有無なども発生に影響を与えている可能性があることから、これらの影響を取り除くため多変量解析を実施。その結果、ABO式血液型がペロニー病の発症に関連する有意な因子であることが示されたとする。
研究チームでは、ペロニー病の重症度を含む患者背景とABO式血液型との関連も評価。年齢、生活習慣病、喫煙歴の有無や、陰茎の彎曲度、彎曲方向などペロニー病の重症度に関しては、血液型で差はなかったものの、デュピュイトラン拘縮の合併はO型患者で多い傾向にあることが確認されたとしている。
なお、研究チームでは、ペロニー病の発症と進行に関与する一部のサイトカインの血中濃度は、他の血液型と比べO型で高いことが報告されていることから、今回の結果はそれを支持するものとなるとしており、この成果によって、ペロニー病の病因解明が進むことが期待されるほか、一人ひとりが血液型とペロニー病のリスクを理解し、生活習慣の改善などに役立てることで、ペロニー病の予防につながることも期待されるようになるとしている。