10月20日から22日にかけて東京ビッグサイトの青海展示棟で開催されている「RISCON TOKYO 危機管理産業展2021」にヤマハ発動機が出展し、洪水救難艇や発電機のコンセプトモデルを披露した。

出展テーマは「遊んで 備える」。

遊びといった普段の生活の中に防災ツールを取り入れることで、有事に正しく操作するための知識やスキルを自然と習得するという「平時に楽しみ、有事に役立つ」防災スタイルを提案したいといった考えから同テーマでの出展に至ったという。

同展示では、そういった普段からの取り入れやすさを意識したコンセプトモデルなどが紹介されている。

暗闇でも操作手順がわかる発電機

最初に紹介するのは、ヤマハ発動機が発売しているインバータ式の発電機とそれをベースとしたコンセプトモデル「EF1800iS」「EF900iSGB2」だ。

  • EF900iS

    すでに販売済みの発電機「EF900iS」。ちなみにこれまでヤマハ発動機が販売した発電機はすべて青色がベースになっているという

  • EF2500i

    同じく販売済みの発電機「EF2500i」

  • EF1800iS

    コンセプトモデルのEF1800iS

  • EF900iSGB2

    同じくコンセプトモデルのEF900iSGB2

蓄光塗料を用い、停電時などの暗い場所でも操作手順がわかるよう工夫したという。

  • 蓄光

    黒い幕で覆って撮影したもの。手順に番号が振られており、暗所でも操作できるよう、蛍光塗料によって光るようになっている

「EF900iSGB2」はガスボンベを燃料として発電。「EF1800iS」は自動車用のレギュラーガソリンを燃料として発電する。連続運転可能時間はモデルによって決まっているが、ガソリンを注ぎ足すことで再発電が可能で、蓄電池とは異なり発動機本体の充電を必要としないのが特徴だ。

車イスごと乗船が可能な洪水救難艇

続いて紹介するのは、洪水救難艇のコンセプトモデル「RS-13」。全長4.03m、横幅は1.72mで6名乗りを想定したボートだ。コンパクトな設計のため、2トントラックで移送が可能。最大の特徴はフロントゲートの展開が可能なことだ。

  • RS-13

    「RS-13」。船首からの救命が可能なようにフロントゲートが展開する

これにより、水上から要救助者を容易に救助することや、兼ねてより要望の声があった“車イスごと船内に収容すること”が可能になるという。

  • 車いす

    フロントゲートから車イス使用者を車イスごと救助することができる

  • 閉じたところ

    フロントゲートを閉じたところ

また、トラックレールを船外、船内に設置。船内のトラックレールによりイスの位置を移動させることができ、船外に設置したトラックレールにハンドルを装着すれば複数人で船を持って移動させることも可能だという。

  • ハンドルの装着

    トラックレールにハンドルを装着したところ

潮流などの影響を受けにくくなるように、船型を「RS-13」用に新たに開発。安定した走行となるよう工夫したという。

ブースに居た担当者に話を聞いたところ、「普段は釣りなどの遊びに使えて、いざとなれば救命に使えるくらいポテンシャルがある。さまざまな方に使っていただくため、求めやすい価格にできるように開発を進めていきたい」と商品化に向けた意欲を語ってくれた。

同じくコンセプトモデルの救難仕様水上バイクは、すでに東京消防庁などで水難救助に使用されている「MJ-FX HO」に救難仕様の装備を加えたものだという。

コンセプトモデルでは、船尾からの救助がしやすいようボードの装着が可能になっている。

  • 救難仕様水上バイク

    救難仕様水上バイクのコンセプトモデル。船尾にボードの装着が可能だ

「RS-13」「MJ-FX HO」の紹介動画(出典:ヤマハ発動機)

トリシティをベースにした悪路対応防災コミューター

悪路対応防災コミューター「ラフロード トリシティ コンセプト」は「トリシティ125/155」をベースにした、災害時の走行までを想定したコンセプトモデル。「スクーターのように気軽に乗車できて、悪路も走行できる」ようにさまざまな工夫を行ったという。

  • ラフロード トリシティ コンセプト

    展示されている「ラフロード トリシティ コンセプト」

ブースの担当者によれば「悪路でも走行できるオフロードバイクは、訓練しないと乗車ができず、扱いにくかった。普段から扱いやすいバイクにするために、前二輪の安定感を取り入れながら、液状化した地面や悪路でも走行できるようにブロックタイヤを取り入れ、地面についてしまわないよう車高を高くした。また、救援物資などの運搬を想定し、キャリアを設置し、災害時にも普段使いにも活用できるよう工夫した」との事だ。

「ラフロード トリシティ コンセプト」の紹介動画(出典:ヤマハ発動機)

外部に信号を送ることもできる投光器

そして、普段一般の人が接することがないものながら、非常に興味深かったのが消防向けモデルのLED可搬式投光器「X-BUSTER(クロスバスター) LED」。

  • 「X-BUSTER LED」

  • 屋内の救助活動を想定し、手持ちでも負荷が軽くなるよう、ボディにはカーボンファイバー素材を用い軽量化

こちらは消防専用モデルで、手元のボタンでコントロールボックスに信号連絡を送ることが可能。屋内の状況などをコントロールボックスを通じて屋外に伝えることができる。

また、ケーブルは蓄光仕様で暗所でも視認することを可能としており、緊急脱出用のロープとしても活用が可能な引張強度7.845Nを実現したという。加えて手元のスイッチで、広い箇所を照らす拡散モードと狭い範囲を照らす集光モードの切り替えが可能。これらの機能の多くは実際に消防士の方々の意見を取り入れて実装されたものだという。

ちなみに展示には含まれていないが、同社では、相次ぐ自然災害において「安全を心がけるライダーだからこそできることはないか」をバイクライダーひとりひとりが考え、同志と共有することをサポートするプロジェクト「防災ライダー FIST-AID」を立ち上げ、防災×ライダーに関するノウハウを集約したブックレット「防災ライダー100のテクニック」をクラウドファンディングで資金を集め製作。

同ブックレットは、クラウドファンディングの返礼品として贈られたほか図書館や教習所などに寄贈されたという。

  • 防災ライダー100のテクニック

    ヤマハ発動機が制作した「防災ライダー100のテクニック」

遊びなどの日常に、防災車両やグッズを取り入れることで、機材に親しむ機会をつくるという新たな防災スタイルを紹介するヤマハ発動機。遊びという楽しい時間に自然と災害への備えが身に付くというコンセプトは魅力的ではないだろうか。

なお、RISCON TOKYO 危機管理産業展2021での展示は10月22日までで、入場するためには事前に展示会への来場登録が必要だ。