英国に拠点を置く市場動向調査会社Omdiaによると、2020年の世界半導体市場(日本市場を含む)が前年比10.4%増の4733億ドルと2桁成長する中、日本の半導体企業の合計売上高は、前年比1.6%増の434億ドルにとどまったという。
世界市場の9%を占める日本の半導体企業だが、その上位10社の売上高合計は前年比5.2%増となったものの、11位以下の半導体企業の売上高合計額は同19.7%減の2桁下落となり、売上高全体の約1割を占める中小企業の凋落が目立った。
日本の半導体企業売上高トップはNAND専業のキオクシア(旧 東芝メモリ)で、NANDの価格高騰の恩恵を受け、その売上高は前年比23%増と2桁成長を遂げたものの、世界の半導体企業ランキングでは11位とトップ10ランク外となった。
2位はソニー子会社のソニーセミコンダクタソリューションズ(世界ランク14位)、3位はルネサス エレクトロニクス(同19位)で、この3社が年間売上高60億ドルを超す国内大手3社となる。ただ、ルネサスは毎年世界での順位を落としてきており、今後も世界ランキングのトップ20以内に留まれるかが注目される。全体的な順位としては、2019年と比べて1~8位まで変動はないが、富士電機がパワー半導体への投資で売り上げを同20%増とし、2019年の11位から9位へと浮上。その結果、売上高を同14%減と落としたソシオネクストが前年の9位から10位へとランクを1つ落とす結果となった。
日本の半導体企業売上高トップ10のうち、ルネサス エレクトロニクス、ローム、日亜化学工業、サンケン電気、ソシオネクストの5社が前年比で売り上げを減少させており、コロナ特需の恩恵に預かれなかったものとみられる。
Omdia コンサルティング・アソシエイツ・ディレクタの前納秀樹氏は、「日本勢トップは米韓のメモリメーカー同様、メモリ需要の恩恵を受けたキオクシアだが、前年比23%増と大きく成長したものの、世界ランキングでは11位と、2019年と同様に世界のトップ10には入れなかった。パワー半導体を手掛ける三菱電機や富士電機も売り上げを伸ばしているが、日本勢トップ10の平均成長率は5.2%と世界半導体企業の平均成長率の半分にとどまった」と述べている。
世界市場トップ10はいずれもプラス成長
2020年の世界半導体売上高ランキングトップ10を見ると、1~4位までは前年からの変動はなく、Intel、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyとなっている。注目すべきは5位のQualcomm、8位のNVIDIA、そして前年14位から一気に10位に入ってきたMediaTekで、この3社はいずれも前年比で30%以上の成長率を達成している。
10位のMediaTekの売上高は111億4200万ドルで、世界トップ10に入るためには111億ドル以上の売上高を達成しないとならない。そのため108億7000万ドルであったキオクシアが惜しくも11位となったとする。
製品カテゴリ別に見ると、DRAM市場が前年比6.7%増、NAND市場が同24.3%増、MPUが同12.4%増、アナログ半導体が同9%増と堅調に成長した市場も多いが、車載半導体市場のように、自動車市場が2020年前半、新型コロナの影響で停滞した結果、同4.4%減とマイナス成長に陥った分野もある。この車載半導体市場は、2020年末には需要が回復傾向となり、2021年の回復は確実視されているが、2020年前半に車載半導体の発注を控えた結果、ファウンドリがその生産能力をほかのカテゴリ製品に割り当てることとなり、自動車市場が回復しても、すでに割り当てた枠をずらすことは容易ではなく、かつウェハの投入から完成までには数カ月が必要となるため、車載半導体の不足が生じている状況となっている。
なお、Omdiaコンサルティング・アソシエイツ・ディレクターの前納秀樹氏は、「2020年の半導体市場は新型コロナの影響がプラスに働き、前年比10.4%増と好調だった。トップ4はプロセッサのIntelと韓国と米国のメモリ勢で、在宅勤務と遠隔学習の浸透によりデータセンターやPCの需要拡大が成長につながった。トップ10の顔触れは2019年とほぼ同じだが、同7%弱の成長をSTMicroelectronics以上に5Gスマートフォンの市場立ち上がりを追い風にしたMediaTekがトップ10入りを果たし、STを圏外に追いやる結果となった。新型コロナに起因する電子機器の需要高は今後も継続すると見られ、半導体不足による値上げも手伝い、世界の半導体売上高は今後も高水準で推移していくとみられる」と述べている。