ロシア国営宇宙企業ロスコスモスとGKローンチ・サーヴィシズは2021年3月22日、白色と青色の特別塗装を施した「ソユーズ2.1a」ロケットを打ち上げた。

ユーリィ・ガガーリン宇宙飛行士の宇宙飛行から今年で60周年を迎えることを記念したもので、今年いっぱい、GKローンチ・サーヴィシズによる商業打ち上げではこのカラーリングが使われるという。

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    組み立て中のソユーズ2.1aロケット。ガガーリン氏の宇宙飛行から60周年を迎えることを記念し、白と青の特別塗装が施された (C) Roskosmos

白と青のソユーズ・ロケット

ソユーズ2.1aロケットは、日本時間3月22日15時07分12秒(現地時間9時07分12秒)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31/6発射台から離昇した。

ロケットは順調に飛行し、搭載していた韓国航空宇宙研究院(KARI)の地球観測衛星「次世代中型衛星1号」や、日本の宇宙ベンチャーの衛星をはじめ、計38機の小型・超小型衛星を所定の軌道に投入した。

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    ガガーリン宇宙飛行士による人類初の宇宙飛行から60周年を記念した、特別塗装が施されたソユーズ2.1aロケットの打ち上げ (C) Roskosmos

通常のソユーズ2ロケットは、灰色を基調とし、エンジン部分などにオレンジ色の差し色が入ったカラーリングをしているが、今回は白色を基調とし、オレンジ色の代わりに青色が入るという、特別な塗装が施された。

ソユーズ2ロケットの商業打ち上げを手掛けるGKローンチ・サーヴィシズによると、この塗装はユーリィ・ガガーリン氏による人類初の宇宙飛行から今年で60周年を迎えることを記念したものだという。白色は全ロシア博覧センター(VDNKh)に記念碑として展示してある「ヴォストーク」ロケットの試作機の色から、青色は同社のコーポレート・カラーから取ったとしている。

また、今年いっぱい、GKローンチ・サーヴィシズが関わるソユーズ2の打ち上げでは、すべてこのカラーリングになるという。

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    打ち上げ準備中のソユーズ2.1aロケット (C) Roskosmos

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    今回の特別塗装のモデルとなった、全ロシア博覧センター(VDNKh)に記念碑として展示してあるヴォストーク・ロケットの試作機 (C) GK Launch Services

ガガーリンの宇宙飛行から60年、いまなお使われ続けるR-7

ユーリィ・ガガーリン氏が人類初の宇宙飛行に旅立ったのは、いまから60年前の1961年4月12日のことだった。ガガーリン氏が乗った宇宙船「ヴォストーク」は、ヴォストーク・ロケットによって打ち上げられ、地球周回軌道に投入。約90分の宇宙飛行をこなし、地球に無事帰還した。

このヴォストーク・ロケットは、もとを辿れば世界初の大陸間弾道ミサイルである「R-7」であり、また1957年に人類初の人工衛星「スプートニク」を打ち上げた「スプートニク」ロケットから、基本的な構造などはそのままに、第2段の追加などで打ち上げ能力を向上させたロケットである。

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    ガガーリン宇宙飛行士が乗ったヴォストーク・ロケットの打ち上げ。世界初の大陸間弾道ミサイルである「R-7」を起源とし、いまなおほぼ同じ姿かたちのソユーズ2が飛行している (C) Roskosmos

このR-7シリーズはその後も、エンジンや電子機器の改良などは行われたものの、基本的な構造はそのまま継承され、最新のソユーズ2シリーズがいまなお世界の第一線で活躍し続けている。

ソユーズ2は、見た目はヴォストークなどとほとんど同じではあるものの、内部は大きな進歩を遂げている。特筆すべきは、旧来のソユーズ・ロケットはウクライナ製の飛行制御システムを使っていたが、ソユーズ2ではロシア製になっていることである。これによりウクライナ依存が解消され、ロシアにとって宇宙へのアクセスの自律性を維持し続けることができるようになった(ただし、100%完全な国産化には至っていないという情報もある)。

また、従来のアナログ・コンピューターから、デジタル・コンピューターになり制御能力も向上。従来は不可能だったロール制御や、コア機体の直径よりも太い大型フェアリングを装備しての打ち上げが可能となった。

なお、今回打ち上げられたソユーズ2.1aは、従来から1段目、2段目エンジンを改良し、電子機器を近代化したロケットだが、ソユーズ2にはこのほかにも、3段目エンジンも改良して打ち上げ能力をさらに高めた「ソユーズ2.1b」という機種もある。また2.1aとbは、欧州のアリアンスペースにも輸出され、「ソユーズST」という名前で、南米仏領ギアナからも打ち上げられている。

さらに、ソユーズ・ロケットの特徴でもある、大根のような形の4基の1段目機体を取っ払い、さらに2段目エンジンも換装し、もはやR-7とは似ても似つかなくなった「ソユーズ2.1v」という機種も存在する。

現在では、すべてのソユーズ・ロケットの打ち上げが、このソユーズ2シリーズの機体で行われるようになっている。

有人宇宙船「ソユーズ」の打ち上げだけは、信頼性を重視し、長らく旧式の「ソユーズFG」という機種が使われてきたが、それも昨年4月にソユーズ2.1aへ世代交代を果たしている。

また、これにともない、ソユーズFGなどの旧型ソユーズ・ロケット用の発射台だったバイコヌール宇宙基地の第1発射台「ガガーリン発射台」――すなわちガガーリン氏が60年前に飛び立った発射台も、ソユーズ2シリーズの打ち上げに対応するための改修工事が行われている。

現在ロシアでは、ソユーズ2などを代替するための新型ロケット「ソユーズ5/イルティーシュ」の開発が進んでいる。ソユーズ5は名前こそソユーズだが、R-7シリーズとは2段目エンジン以外ほとんど関連がない、まったく新しいロケットになる見込みである。

ソユーズ5の初打ち上げは2023年ごろに予定されており、その後数年かけて、ソユーズ2からの代替が進んでいくものとみられる。したがって、これからもしばらくは、ガガーリン氏が乗ったロケットの子孫が活躍する光景を見続けることができよう。

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    昨年10月に打ち上げられたソユーズMS-17宇宙船を搭載したソユーズ2.1aロケット (C) Roskosmos

参考文献

https://www.roscosmos.ru/30402/
https://www.roscosmos.ru/30286/
38 SATELLITES FROM 18 COUNTRIES WILL BE DELIVERED INTO ORBIT FROM BAIKONUR COSMODROME ON MARCH 20 - GK Launch Services