半導体市場動向調査会社の米IC Insightsが毎年1回12月に発行している世界IC工場の生産能力調査レポートによると、2020年12月時点で、日本は150mm以下の小口径ウェハの生産能力で1位、200mmの生産能力が一番多いのは台湾、300mmの生産能力が一番多いのは韓国であったという。
この統計はWSTSの定義に従ったICを対象として実施されているもので、工場の所在地ごとに集計しているものとなる。
300mmウェハの生産能力トップは韓国ながら、僅差で台湾が2位についている。TSMCは現在、先端プロセスを中心に生産能力の拡充を進めており、今後、その動向次第では韓国を抜きトップに立つ可能性もある。3位は日本と中国が同数で並ぶ。日本はキオクシア、ソニーセミコンダクタソリューションズ、ルネサス エレクトロニクスなどが300mmウェハでの生産を行っている。一方の中国はSMICやYMTCなどが300mmウェハでの生産を行っているという。そして5位が米国となっている。
200mmウェハの生産能力もトップは台湾ながら、これを僅差で中国が追いかけている。3位は日本で、米国と欧州がそれに続いている。150mmウェハ以下の生産能力トップは日本だが、企業別に見ると、トップ10に日本企業は7位にローム(ラピス セミコンダクタ含む)、8位に東芝が入っているだけであり、トップ10に入らない規模の企業が多く存在していることとなる。
かつて日本は、300mmから150mm以下に至るまですべての口径で生産能力がトップであった時代があった。しかし現在は、300mmで韓国に抜かれ、200mmで台湾に抜かれてしまい、150mm以下の小口径ウェハのみトップを維持している状況となっている。日本以外の国は生産効率の悪い小口径ウェハファブの多くが処分(廃棄あるいは中国へ転売など)したところが多いが、日本はいまだにDRAM全盛であった自体のレガシーファブが多く残っており、レガシーデバイスやパワー半導体、センサ、MEMSなどの製造が行われている。
すべての口径で高い生産能力を有するTSMC
ウェハサイズ別の生産能力を企業別に見ると、それぞれの口径のトップ10すべてにランクインしているのはTSMCのみである。同社は先端の7nmや5nmプロセスの生産に注目が集まっているが、300mmウェハの生産能力ではSamsung Electronicsに次いで2位、200mmウェハではトップ、そして150mm以下でも10位にそれぞれランクインしている。
300mmウェハの生産能力ランキングを見ると、Samsung、TSMC以下はMicron Technology、SK Hynix、キオクシア/Western Digitalなどのメモリサプライヤ、Intel、Texas Instruments(TI)といったIDM、そしてGLOBALFOUNDRIES(GF)、UMCといったファウンドリと、大口径ウェハと微細プロセス技術などを活用してダイあたりの製造コストを低減することで高い利益を得ることを得意とする企業が多く、これらの企業は300mmウェハファブの生産能力の向上に向けた投資も継続して行っている。
200mmウェハの場合は、トップのTSMCに次ぐのはSTMicroelectronicsで、そのほかInfineon TechnologiesやTI、NXP Semiconductors、ON Semiconductorなど、アナログ/ミクスドシグナルやマイコンなどで強みを有する企業が多い。そして150mmウェハ以下の場合、中国系のCR Microが1位、同じく中国系のSilanが2位にランクイン。2社ともにアナログ/ミクスドシグナル、パワー半導体、およびディスクリート半導体の生産向けに巨大な150mmウェハファブを有している。
ちなみに150mmウェハ以下5位のSTMicroだが、かつてシンガポールにてかなりの生産能力を有していたものの、近年、ファブの再編を実施。その結果、1つのファブはMEMSベースのマイクロ流体製品(インクジェットプリンタのヘッドなど)の製造へと転換が進められたほか、ほかのファブは200mmウェハへの対応に向けたアップグレードが実施されている。
なお半導体業界は、より大きなファブでより大きなウェハを用いることで事業成長を図ろうという流れにあるため、その動きに対応できるICメーカーの数は減少傾向にある。同社の調査によると、2020年12月時点で200mmウェハを所有・運営している企業は63社であり、300mmウェハを所有・運営している企業は28社であり、300mmウェハの生産能力はトップ5だけで、全世界の約4分の3(74%)を有しているという。