ディスコは2月5日、2021年1月に竣工した同社長野事業所・茅野工場の新棟の内部をオンライン形式で報道陣に公開。併せて、同社最高経営責任者(CEO) 兼 最高執行責任者(COO) 兼 最高情報責任者(CIO) 兼 技術開発本部長の関家一馬氏が、建設に至った背景や今後の方針について説明を行った。

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    ディスコ 長野事業所・茅野工場新棟(B棟)の全景 (画像提供:ディスコ)

約175億円をかけて建設された長野事業所・茅野工場の新棟は建築面積1万6241.96m2、延床面積13万1857.90m2の地上10階建てという巨大なもの(事務フロア含む)。必要な規模の建屋を工期を分けて建てるという考えもあるが、関家CEOは「分割して建設する案もあったが、建てられる最大面積を一気に建てる案に比べて、建設にかかる費用の総額が高くなってしまう。その費用を抑えるために、一括で最大規模で建てることにした」と、コストを重視した判断であったとする。

そのため、新棟は一気に生産ラインを各フロアに導入するのではなく、時期を見ながら、順次埋めていく、という流れになるという。最初に埋められるのは新棟6階で、全自動のダイシングソーが製造される予定で、計画では2021年4月からの稼働を目指すとしている。

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  • ディスコ 長野事業所・茅野工場新棟の製造フロア。内装は自社で行う予定だという (画像提供:ディスコ)

この取り組みについて関家CEOは「現時点で必要な量が賄えないから建てた、というわけではなく、中長期的な観点で広島の拠点での生産のみではBCMとして見た場合、リスクがあるということで、長野でも同じものを生産できるようにしたいという考えが基本」としており、あくまで先を見据えた投資であることを強調する。そのため、製品製造に関する明確なスケジュールを決めるのではなく、「1つひとつ、広島(呉工場や桑畑工場)と同じ品質で生産できるのか、といったことを確かめながら生産の拡充を図っていく」と、5年、10年といった長期的な考えでの取り組みだとする。

ただ、長野事業所に対しては、「第2製造拠点として存在感を持ってもらいたい」、「売り上げの3分の1を占めるまでには成長してもらいたい」と大きな期待を寄せており、先行して高い品質を実現している広島の工場から学ぶことで、生産品質の強化を図っていくとしている。 また、将来に向け「用地は必要になってから探すのでは妥協をしないといけない部分がでてくる。そのため、いつまでに必ず買うということではないが、良い土地があれば買っておく。茅野は長年の取り組みにより地縁が増えていることもあり、候補地を探す有力候補」と、新工場の設置に向けた土地探しを茅野市で順次進めていくとする。

なお、2021年初頭の時点で半導体業界、半導体製造装置業界ともに活況を呈しており、同社も忙しい状態が続いている。これについて関家CEOは「ボトルネックは生産のために必要な人員の確保。全力で採用を進めているが、決して妥協して数合わせでの採用はしていない。そのため採用できる人が急に増えるわけでもない」と、良い人材が居れば、順次採用を進めていくが、なかなかそういう人物が次々とでてくることのない苦悩を語っている。その一方で、「売り上げを伸ばすのが重要ではなく、良い製品、良いサービスを提供していくことが結果的に売り上げを伸ばすことにつながる」としており、今後もOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test:パッケージングからテストまで請け負う製造業者)などが必要とする機能などを追及し、それを高い品質で提供していくことを目指すとしている。

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  • ディスコ 長野事業所・茅野工場新棟の10階は社員食堂になる予定。テラスも設置されており、日本アルプスの山々を一望できる (画像提供:ディスコ)

2021年2月12日訂正:記事初出時、本文中におきまして関家一馬氏の表記を一部誤って記載しておりましたので、当該部分を訂正させていただきました。また、併せて稼働開始時期も2021年7月と記載しておりましたが、正しくは2021年4月となりますので訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。