韓国最大の鉄鋼メーカーPOSCO傘下の化学メーカーPOSCO Chemicalと化学メーカーOCIの合弁会社であるP&O Chemicalは1月28日、韓国の光陽市にて半導体基板洗浄に必須である高純度過酸化水素(H2O2)を生産する工場の着工式を開催したことを明らかにした。韓国政府の「素材・部品・装備国産化推進」政策に沿った事業展開だという(ここでの装備とは、製造装置と付帯設備を指す韓国語の表現)。

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    半導体基板洗浄向け高純度過酸化水素製造工場の起工式典の様子 (出所:POSCO Chemical Webサイト)

POSCOとOCIは現在、パートナーシップを締結し、さまざまな高付加価値素材事業を推進するとしているが、今回の過酸化水素の製造協業もその一環だという。P&O Chemicalは、POSCO Chemicalが51%、OCIが49%の株式を保有している過酸化水素の生産合弁会社という位置づけとなる。

POSCOによると、工場の完成は2022年5月を予定しており、年間5万トンの電子工業グレードの高純度過酸化水素(メタル不純物含有量1ppt以下)が生産される見通しだという。

世界中に半導体工場では、米RCAが1970年に発表した過酸化水素にアンモニアや塩酸を混合した薬液(いわゆるRCA洗浄液、PMおよびHPMと呼ばれる組成の2種類の薬液で構成されている)でシリコンウェハを洗浄するレシピが世界標準として広く普及している。必要に応じて希釈フッ酸と併用される。今後、韓国内の半導体企業各社がメモリおよびロジックファブを拡張し、半導体デバイスを増産することから、洗浄用薬液の消費が大きく伸びることを見越しての工場建設だという。

新工場はPOSCOの光陽製鉄所の隣接地に建設され、光陽製鉄所光陽製鉄所のコークス炉ガス(Cokes Oven Gas)の配管を新工場に接続、水素を精製抽出して過酸化水素を製造する計画としている。この方法は既存のLNG(天然ガス)の抽出方式と比較して原料費が安く、水素抽出を終えたコークス炉ガスを再び製鉄所に供給して再利用するため、経済性を向上させることができるという。

韓国政府は、半導体製造に使われる素材の国産化を推進しており、日本の素材メーカーは韓国でのシェアを失いかねない状況になりつつある。特に、日本政府の輸出管理強化品目であるフッ化水素は、液体、ガス共に韓国内での生産が短期間で実現したことから、日本のフッ化水素サプライヤの経営が悪化してきている。なお、韓国政府の推進する国産化には、外国企業の韓国内での製造も含まれるため、東京応化工業はEUVレジストを含む各種フォトレジストで、ダイキン工業は半導体エッチング液に関して韓国に工場を進出しており、日本だけではなく台湾や米国の素材サプライヤも韓国への進出を進めている。