アラクサラネットワークス、シスコシステムズ、NECは1月29日、日本の重要インフラに向けた情報セキュリティ対策における戦略的協業をすると発表した。同協業では、シスコ製品をアラクサラのソリューションとしてブランド化し、日本の重要インフラ企業に提供する枠組みを形成する。

協業の下、アラクサラは国内でシスコ製ネットワーク機器の真生性を確認した上で自社のソフトウェアと組み合わせて販売する。NECはセキュリティ技術や保有するセキュア検査などのアセットをアラクサラへ提供するとともに、アラクサラのソリューションやNEC製品を組み合わせるなどして、重要インフラ産業に信頼性を確保したネットワークシステムを提供する。

NEC 執行役員常務の河村厚男氏は、「現在、あらゆるモノがつながるようになっている中、セキュリティのリスクは増している。サイバー攻撃の被害はOTの世界でも広がっている。日本では、内閣サイバーセキュリティセンターが国民生活と社会経済活動を支える重要インフラの情報セキュリティ対策を推進している。サプライヤーとインフラ事業者が連携して、セキュリティ対策を提供することがより重要になると」とし、今回の協業の意義を説明した。

  • NEC 執行役員常務 河村厚男氏

  • アラクサラネットワークス、シスコシステムズ、NECの協業のスキーム

  • 協業における3社の役割

米シスコシステムズ アジアパシフィックジャパンアンドチャイナ プレジデントデイヴ・ウェスト氏は、「3社の協業により、日本の重要インフラに求められる次世代型のインフラプラットフォームを提供するとともに、3社の強みを結集することで、日本の企業のデジタルトランスフォーメーションに必要なプラットフォームを実現する」と述べた。

シスコシステムズ 代表執行役員会長の鈴木和洋氏は、「日本の企業はセキュリティやワークスタイルなどの面でニューノーマルへの対応が求められている一方、日本は国家としてSociety 5.0を掲げている。こうした中、日本市場において最も重要なことは重要インフラサービスの安全かつ持続的な提供への貢献と考えている」と述べた。

  • 米シスコシステムズ アジアパシフィックジャパンアンドチャイナ プレジデントデイヴ・ウェスト氏

  • シスコシステムズ 代表執行役員会長 鈴木和洋氏

アラクサラネットワークス 代表取締役社長兼CEOの中川勝博氏は、「これまでのセキュリティ対策はセキュリティ機器による監視(SOC)、ネットワーク監視(NOC)によってエンドポイントは十分カバーされてきたが、検出できないサイバー攻撃もある。今後は、ルータやスイッチから得られる情報の活用が有効であると考えらえるため、強化していきたい」と述べた。

  • アラクサラネットワークス 代表取締役社長兼CEO 中川勝博氏

アラクサラが販売を行うシスコ製品はCisco NCS 5500, 560および540で、自社のソフトとパッケージ化したものを「Cisco NCS 5500/560/540 Trusted by ALAXALA」としてNECに提供する。

加えて、アラクサラはユーザーに製品を手渡す最終工程で、アラクサラの出荷検査と出荷証跡管理を実施し、製品の安心と安全を担保する。製品を手渡した後はアラクサラ運用管理ソフトによって監視を行う。

今回、アラクサラは競合のシスコ製品を販売する背景について、「NCSシリーズは広帯域での利用に適しているほか、MPLSに対応しているが、われわれはこれらの機能を搭載した製品を持っていない。NCSシリーズに運用や監視に役立つ機能を付加することで、ユーザーに価値を提供していきたい」と説明していた。

  • アラクサラの品質保証の体制

NECは2021年4月以降、「Cisco NCS 5500/560/540 Trusted by ALAXALA」の販売を行うが、重要インフラサービスの持続的な提供のためのセキュリティ対策をネットワークシステムのライフサイクルを通じて提供していく。

将来的にはアラクサラのセキュリティ・運用管理技術とNECのセキュリティ技術と連携させることで、運用中のネットワーク機器の脆弱性などを標的とした不正命令実行やプログラム改変を監視し、よりセキュアな運用管理ができるソリューション提供を目指す。

河村氏「われわれはゼロトラストを前提として、セキュリティ対策を提供していく。これまでは、製品にセキュリティ対策を追加していたが、今後はSecurity By Designという考え方の下、セキュリティを担保したうえで製品を作り、その結果、安全な社会システムが維持される。これを実現するのが今回の協業の狙いでもある」と語っていた。