文部科学省(文科省)傘下の科学技術振興機構(JST)は2021年1月20日に開催した理事長記者説明会にて、2020年9月から11月まで公募したムーンショット型研究開発制度の中の新目標「ミレニア・プログラム」での採択課題として21件を採択したと発表した。

実際には、JSTは1月19日付で、この「ムーンショット型研究開発制度の新目標への採択課題21件を採択した」と情報公開を行っているのだが、この「ムーンショット型研究開発制度」は、内閣府の下に総合科学技術・イノベーション会議が2040年から2050年までに実現したい社会像などの目標を7つ提案し、JSTや新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが、この7つの目標の実現に向けて研究開発態勢づくりを進めているもの。そして、この7つの目標以外に、「新型コロナ禍による経済などの社会変容を契機とした将来像」を目指した挑戦的な研究開発としてミレニア・プログラムを別枠として設け(図1)、JSTが具体的な採択課題チームを公募し、今回、その採択課題チーム21件が公表された。

このミレニア・プログラムは、2020年9月8日から11月10日まで「若手の柔軟かつ自由なアイデアを取り込みながら」と提示されて公募され、129件の応募を得ていたもの。この応募を基に、2020年12月内に書類選考会と面接選考会を経て、今回の発表した採択課題21件が選ばれた。採択された21件は、まず2021年1月から6月ごろまでにわたって課題解決に向けた目標を設呈するための実現可能なシナリオなどをつくる調査研究が実施され、調査研究費として約500万円が支給される。

各採択課題チームが作成した調査研究に基づく実現可能なシナリオなどをもとに、JSTビジョナリーリーダー(統括は渡辺捷昭氏=前トヨタ自動車代表取締役社長)などのガバニング委員会の下で2021年6月に「ムーンショット目標」設定が選ばれて、そのプロジェクトマネージャー(PM)などが選ばれる(2021年10月の予定)。このプロジェクトマネージャーの下で、研究開発チームがつくられ、2022年から最長10年間の予定で研究開発フェーズに入る計画になっている。最長10年間の研究開発予算額は数億円から数十億円の見通し。

JSTの濵口道成 理事長は今回採択された21件の中で、特徴的だったチームとして「大阪大学の現役の大学4年生がチームリーダーを務める課題」を挙げた。採択課題「科学技術による『人類の調和』検討チーム」で、採択チームが提案する社会像は「思考転写、合意形成、融和を促進する科学技術により、個人や集団の分断が克服され『人類の調和』が実現」となっている。そのチームリーダーとして大阪大学 基礎工学部 学部学生の佐久間洋司氏が務め、サブチームリーダーを京都大学 大学院情報学研究科の井上昴治 助教が務めている。

  • ミレニア・プログラム

    図1 今回公表された「ミレニア・プログラム」の公募内容 (出典:JST Webサイト)