2020年7月30日、科学技術振興機構(JST)は理事長会見を開催し、その中で7月31日が今年度の応募締め切りになった「創発的研究支援事業」の内容とその目指す中身について改めて説明を行った。
この創発的研究支援事業は内閣府・文部科学省が日本の「研究力向上改革2019」という若手研究者育成施策計画に基づいて始める“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者を育成する研究支援事業だ。その事業の実施をJSTが担当する。
この研究支援事業は、大学院で博士号を取得した30歳から40歳までの若手研究者(博士号を所得して原則15年未満)を対象に、挑戦的な研究構想案を考え出せる人物を募集するもので、日本の大学院などで研究する若手人材を対象に「国際的に通用するポテンシャルを持つ若手研究者を結集し融合」させるために、その若手研究者が創発的な研究に集中できる研究環境を確保することを目指している。この創発的な研究とはどのようなものかについては、破壊的イノベーションの創出を目指す創発的研究というモデル図をJSTでは示している。
具体的には、対象となる若手研究人材1人に1年間当たり平均で700万円(+間接費)を7年間支給し、挑戦的で融合的な研究環境を与えようというものとなっている。最初の3年間でその研究成果を評価するステージゲートを設け、ここを通過するとさらに4年間の研究支援が続けられる枠組みとなっている。「1年間に平均700万円の研究費が与えられると同時に、間接経費も与えられる仕組みだ」(濱口道成 JST理事長)と解説する。
この1年間に研究費として平均700万円を獲得した若手研究者は、所属する大学院などで“独立した”地位・身分を持ち、研究内容の裁量権を持つ研究環境を自ら整える。これによって創発的な研究に集中できる研究環境を確保することに努める。この結果、自分で定めた挑戦的な研究を実施・継続し、研究意欲と研究時間を最大化し、自分が構想した挑戦的な研究を追究し、破壊的イノベーションにつながる研究成果を上げることに努める。
事業に採択された当該若手研究者は、研究費としてまず最初の3年間で最大2000万円まで(間接費は直接経費の30%まで)を獲得し、合計7年間で最大5000万円まで獲得できる。
この研究支援事業は最長10年まで可能となっている。さらに別途、研究環境改善のための追加的支援策も実施する場合もあると説明している。
今年度分の応募は7月31日正午に締め切られ、その応募書類の選考を11月中旬まで行い、さらに応募した若手研究者の面接選考を2020年12月上旬から2021年1月中旬まで実施される計画だ。この面接選考によって選ばれた若手研究者は、2021年1月以降に、順次その研究を始めるという事業計画となっている。
この研究支援事業は、2020年度、2021年度、2022年度の3回にわたって募集するが、応募については、1個人について合計2回しかできないという制限がある。2020年度での採択件数は200件の見通しだ。
なお、この創発的研究支援事業実施の予算分として、文部科学省はJSTに500億円の基金を7年分として提供している。長期的な視点で、この事業を実施するためだ。