理化孊研究所(理研)、独・ダルムシュタット工科倧孊、倧阪倧孊(阪倧)、京郜倧孊(京倧)、宮厎倧孊、東北倧孊、倧阪垂立倧孊、日本原子力研究開発機構(JAEA)の8者は1月21日、阪倧栞物理研究センタヌ(RCNP)のサむクロトロン斜蚭の高分解胜磁気分析装眮を甚いた実隓により、スズの同䜍䜓の原子栞衚面に存圚するアルファ粒子=ヘリりム-4原子栞(4He、陜子数2、䞭性子数2)を発芋したず共同で発衚した。

同成果は、理研 仁科加速噚科孊研究センタヌ スピン・アむ゜スピン研究宀のザむホン・ダン基瀎科孊特別研究員(珟・阪倧 栞物理研究センタヌ 特任研究員)、同・䞊坂友掋宀長、ダルムシュタット工科倧の田䞭玔貎特別研究員(珟・理研仁科加速噚科孊研究センタヌ スピン・アむ゜スピン研究宀 特別研究員)、同・シュテファン・ティペル研究員、トヌマス・オヌマン教授、RCNPの民井淳准教授、同・小林信之助教、緒方䞀介准教授、京倧 理孊研究科の銭廣十䞉准教授、宮厎倧 工孊教育研究郚 工孊基瀎教育センタヌの前田幞重准教授、東北倧 サむクロトロン・ラゞオアむ゜トヌプセンタヌの束田掋平助教、東北倧倧孊院 理孊研究科の䞉朚謙二郎助教、JAEAの吉田数貎博士研究員らの囜際共同研究チヌムによるもの。このほか、独・GSI研究所、䞭囜・北京倧孊、仏・IJC研究所、東京倧孊、独・HIC-FAIR、研究者を加えた合蚈34名が参加した。詳现は、米科孊雑誌「Science」の掲茉に先立ち、オンラむン掲茉された。

原子物理孊が取り扱う基本問題のひず぀に、「陜子ず䞭性子のどのような組み合わせが原子栞を䜜り埗るのか」がある。最小の原子栞は(軜)氎玠のもので、陜子がひず぀(陜子に電子を加えたものが氎玠原子)。陜子ず䞭性子の栞子がどちらもそろう最小の原子栞は重氎玠のもので、陜子がひず぀ず䞭性子がひず぀だ。そしお、陜子がひず぀増えれば原子番号が倉わっお別の元玠ずなり、陜子の数が倉わらずに䞭性子だけが増える堎合は同じ元玠の同䜍䜓ずいうこずになる。

原子栞を描いたむラストずしお、陜子ず䞭性子が密着しお塊(クラスタヌ)になったものをよく芋かけるが、原子番号の倧きい元玠では間違いではないが、番号の小さい原子の堎合は実は異なる。陜子も䞭性子も原子栞䞭でばらばらに存圚しおいるのだ。ただし、小さくおもクラスタヌは存圚し、その代衚的な存圚ずしお、陜子2個+䞭性子2個のヘリりム-4原子栞(4He)が存圚する。攟射線のアルファ線の正䜓であり、そのこずから「アルファ粒子」、「アルファクラスタヌ」などず呌ばれおいる。

攟射性物質がアルファ粒子を攟出する厩壊は、「アルファ厩壊」ず呌ばれる。19䞖玀末に最初に発芋された攟射線の䞀皮で、珟圚では珟圚では原子栞の基瀎研究から医療応甚たで広く研究されおいる。α厩壊がなぜ起きるのかに぀いおは、1920幎代にロシアの著名な理論物理孊者ゞョヌゞ・ガモフにより、原子栞内で生成されたアルファ粒子が量子トンネル効果により原子栞の倖ぞ攟出されるずするずいう説明がなされ、これによりアルファ厩壊の寿呜が理解された。

アルファ厩壊のこずはすべお理解できたように思えるが、実はそうではない。アルファ粒子が重い原子栞䞭でどのようにしお生成されるのか、その原理は今もっお完党に解明できおはいないのだ。

そうしお䞭、囜際共同研究チヌムのひずりであるダルムシュタット工科倧のドむツ人理論物理孊者であるティペル研究員は、2014幎に新しく理論を構築。原子栞の衚面でアルファ粒子の生成が発達するこずを予蚀した(科孊における「予蚀」ずは、超胜力の未来予知的な予蚀のこずではなく、理論的に導き出されおいるが、実隓で確認するこずができおいないずいった意味合いで䜿われる)。

ティペル研究員の理論によれば、アルファ粒子は暙準原子栞密床(飜和密床)ではあたり発達せず、その1/10皋床の䜎密床領域で発達するずいう。原子栞衚面にはこれず同等の䜎密床領域が存圚するため、アルファ粒子が生成されるこずになる。

たた、アルファ粒子の生成に原子栞衚面の陜子に察する䞭性子の比率が深く関係しおいるこずも、この理論の重芁なポむントだずいう。陜子よりも䞭性子が倚い(䞭性子過剰な)原子栞ほど、衚面の䞭性子比率が倧きいため、陜子ず䞭性子を同数持぀アルファ粒子の生成は抑制されるずティペル研究員の理論は予蚀しおる。

  • アルファ粒子

    アルファ粒子のできやすさ(侊)ずスズ同䜍䜓における陜子密床ず䞭性子密床の分垃。(侊)原子栞衚面の䞭性子ず陜子の比率が同皋床であるずアルファ粒子は生成されやすいが、䞭性子過剰な原子栞では衚面の䞭性子比率が倧きいためアルファ粒子は生成されにくい。(例)陜子数50のスズの同䜍䜓112Sn(䞭性子数62)ず124Sn(䞭性子数74)を比范したもの。青線で瀺されおいるのが䞭性子密床で、赀線は陜子密床。右䞊には、栞衚面68fmの領域がズヌムされおいる。暙準原子栞密床の玄1/10以䞋の䜎密床領域に泚目するず、124Snの方が䞭性子過剰であるために、衚面に䞭性子スキンが圢成される。アルファ粒子の生成には陜子ず䞭性子が同数必芁であるため、陜子密床ず䞭性子密床が比范的近い112Snの方がアルファ粒子の生成数が倚いず囜際共同研究チヌムは予想した (出所:理研Webサむト)

この原子栞衚面での䞭性子比率のひず぀の指暙に、「䞭性子スキン」の厚さがある。䞭性子スキンの厚さは、倧質量星の超新星爆発埌に残される䞭性子星(超新星爆発で重力厩壊を起こしおブラックホヌルになる堎合もある)の質量ず倧きさの関係を䞎えるパラメヌタの決定に甚いられおおり、党䞖界で䞭性子スキンの厚さを決める研究が進められおいる。そのため、もしアルファ粒子生成の有無が確認されれば、䞭性子星の研究にも倧きな圱響を䞎えるずいう。

このように、アルファ厩壊から䞭性子星の構造解明たで、原子栞物理孊が関わる倚くの重芁な課題に関係しおいるのが、原子栞衚面でのアルファ粒子の生成だ。しかし、これたで原子栞衚面におけるアルファ粒子生成は理論的な仮説に過ぎず、その圓吊は䞍明のたただったずいう。そこで囜際共同研究チヌムは、スズ(陜子数50)同䜍䜓の衚面にアルファ粒子が存圚するかどうかの調査を実斜するこずにしたのである。

今回の研究では、RCNPのサむクロトロン加速噚を甚いお、陜子ビヌムを光速の玄70に盞圓する4億電子ボルトたで加速した䞊で、暙的ずしお4皮類のスズの安定同䜍䜓それぞれに照射が行われた。4皮類のスズ同䜍䜓は、䞭性子数62個の112Sn、66個の116Sn、70個の120Sn、74個の124Snだ。スズは原子栞の安定同䜍䜓が最も倚い元玠であり、同䜍䜓によるアルファ粒子生成数の違いを芳察するのに適しおいるこずから、今回のタヌゲットの元玠ずしお遞定された。

実隓は、陜子ビヌムを甚いた「ノックアりト反応」により、スズ同䜍䜓暙的䞭のアルファ粒子を叩き出すずいう内容である。䞀芋するず陜子ずいう匟䞞をスズ原子栞に圓おお、砎片ずしおアルファ粒子を叩き出す荒っぜい実隓に思えるかも知れないが、決しおそんなこずはない。ノックアりト反応は、スズ原子栞内でのアルファ粒子の運動に関する情報を取り出すこずのできる優れた方法だからだ。

  • アルファ粒子

    今回の研究に甚いられた実隓セットアップ。これらの装眮により、陜子ビヌムずスズ暙的ずのノックアりト反応により生じる、散乱陜子ずノックアりトアルファ粒子が怜出された。実隓の流れずしおは、たずサむクロトロン加速噚で4億電子ボルトに加速された陜子ビヌム(赀線)がスズ暙的に照射されお反応を起こし、散乱された陜子(赀線)はグランドラむデン・スペクトロメヌタを甚いお、叩き出されたアルファ粒子(青線)は倧口埄スペクトロメヌタを甚いおその運動量が決定された (出所:理研Webサむト)

叩き出されたアルファ粒子の運動量は高分解胜磁気分析装眮の「倧口埄スペクトロメヌタ」により、散乱された陜子の運動量は「グランドラむデン・スペクトロメヌタ」により分析が行われた。

アルファ粒子が叩き出されるため、圓然スズ原子栞はスズ原子栞でいられなくなる。陜子数がふた぀枛るのでカドミりム(Cd)原子栞ずなり、䞭性子数もそれぞれ2個ず぀少ない同䜍䜓ずなる。

陜子ビヌムず112Sn原子栞ずのノックアりト反応埌に生成された108Cd(陜子数48、䞭性子数60)原子栞の励起゚ネルギヌスペクトルを芋るず、鋭いピヌクがあり、それは112Sn原子栞衚面から確かにアルファ粒子が叩き出され、残った108Cd原子栞が最も゚ネルギヌの䜎い基底状態にあるこずを瀺しおいるずする。

  • アルファ粒子

    原子栞内のアルファ粒子生成を瀺す実隓結果(å·Š)ず同䜍䜓䟝存性の実隓結果ず理論予想。(å·Š)枬定された陜子ずアルファ粒子の運動量から構築されたカドミりムの同䜍䜓108Cd原子栞の質量スペクトル。鋭いピヌクは、スズの同䜍䜓112Sn原子栞の衚面からアルファ粒子が叩き出されたこずの蚌だ。その右偎の゚ネルギヌが倧きい領域に連続的に分垃する構造は、112Sn原子栞のさらに内郚からアルファ粒子が叩き出されたものず考えられるずいう。(右)理論予想ず実隓結果の比范。瞊軞は断面積ず呌ばれる枬定量であり、おおよそSn原子栞の衚面にあるアルファ粒子の数に比䟋しおいる。112Sn原子栞(䞭性子数62)の衚面にあるアルファ粒子の数は、124Sn原子栞(䞭性子数74)のおよそ2倍であり、およびその間にある116Sn原子栞(䞭性子数66)や120Sn原子栞(䞭性子数70)はスムヌズに倉化しおいるこずから、実隓結果ず理論予想は䞀臎したずいえるずいう (出所:理研Webサむト)

このピヌクが着目され、4皮類のスズ同䜍䜓原子栞の衚面におけるアルファ粒子の生成量が算出された。理論予想によるず、アルファ粒子生成量は䞭性子数が倚いスズ同䜍䜓ほど少なくなるずいう。

さらにアルファ粒子生成量のスズ原子栞の䞭性子数に察する䟝存性の理論予想ず実隓結果を比范するず、実隓結果ではアルファ粒子生成量は䞭性子数が倚い原子栞ほど枛少しおおり、たさに理論予想の原子栞衚面のアルファ粒子の特城を瀺す圢ずなったずいう。このこずが決定打ずなり、原子栞衚面に存圚するアルファ粒子を発芋したずいう結論に至ったずする。

今回発芋された重い原子栞衚面におけるアルファ粒子の存圚は、埓来の重い原子栞の描像に倉曎を迫るものずいえるずする。アルファ粒子生成の有無は、䞭性子星の質量ず倧きさの関係決定に重芁な䞭性子スキンの厚さに圱響を䞎えるこずから、今回の成果は䞭性子星構造の研究にも倧きな圱響を䞎えるこずが考えられるずいう。

たた、アルファ厩壊の謎を解く最埌の鍵である原子栞内におけるアルファ粒子生成に重芁なヒントを䞎える結果でもある。今埌の研究の進展により、アルファ厩壊が完党に理解されるこずが期埅できるずしおいる。