米国に本拠を置くフラットパネルディスプレイ(FPD)市場調査・コンサルティング会社であるDisplay Supply Chain Consultants(DSCC)のアジア代表である田村喜男氏が、年始にあたって「2020年はコロナ禍に伴う工場や生産ラインの立ち上げ遅延で、FPD装置市場は前年比で21%減となる見通しだが、その反動もあって2021年は同45%増の162億ドルへ増加する見込みである」と話している。ただし、2022年以降は以下に述べるように不明確な要素が多く不透明である。
同氏は、「2020年下期からTV用とIT用パネル需要の好調が続いており、この傾向は2021年上期も引き続きそうである。注目は好調の米国のTV需要がいつピークアウトして、どのような速度で減速していくかという点。また、好調な世界のIT需要のピークアウトのタイミングもなかなか読みにくい状況となっている。2020年下期の87~88%という高いLCD工場の稼働率が2021年上期も続くが、下期には87~85%台へと緩やかに低下していく見ている」と語っている。
国内大手ガラス基板メーカーの日本電気硝子(NEG)滋賀高月工場が12月1雄日、5時間の停電が生じガラス窯の停止トラブルが発生。これにより2021年第1四半期のガラス基板供給に影響を与える可能性が出てきた。また、Samsung Displayの韓国 湯井のLCD生産ラインの閉鎖が、2021年3月から2021年末まで延期される可能性も高まってきた。NEGのガラス窯トラブルはLCD需給バランスをさらにタイト化させる一方、Samsung Displayのライン閉鎖の延期は需給バランスのタイト感を緩和させることになる。この結果、2021年第1四半期のLCDライン稼働率は90%まで上昇(もともとは87%の見込み)し「ガラス基板不足」という状態に陥る可能性がでてきたという。
このほか、ドライバIC不足も引き続き注視すべき問題となっており、2021年上期もその状況が継続すると見込まれている。しかし、2021年第1四半期に関しては、ガラス基板の不足の問題がドライバIC不足の問題を上回る可能性が高いともしている。
なお、田村氏はパネル価格については「TV用パネル価格は横ばい予想から、引き続き上昇する可能性が出てきた。ガラス基板価格も、据え置きか上昇が見込まれる。IT用パネル価格も上昇している。しかし、LCDの需給バランスは第2四半期から緩和され、TV用パネル価格も下落に転じていくだろう」との見方を示している。