Samsung Electronicsが、イメージセンサ業界でシェアトップのソニーとの差を縮めることを目的に、2021年に複数のDRAM製造ラインをCMOSイメージセンサの製造ラインへと転換し、増産を図る計画であると韓国メディアが報じている。
この計画は、SamsungのシステムLSI事業部戦略マーケティンググループリーダー(Samsung VP)のPark Yong氏(2020年12月初旬までシステムLSI事業部センサ事業グループリーダーで、同月の人事にて現職に異動)が語ったとされるもので、具体的にはすでに半分をCMOSイメージセンサの量産ラインへと転換している韓国華城事業所のDRAMラインであるLine 11の残り半分も2021年中にCMOSイメージセンサの量産ラインへと転換しようというもので、背景には同社の高解像度イメージセンサに対する中国のスマートフォン(スマホ)メーカーからの需要が増えてきており、現在の生産能力では賄いきれなくなってきたためだという。
SamsungはこのLine 11の半分のほか、Line 13のすべてのラインをCMOSイメージセンサ向けに転換しており、CMOSイメージセンサの売上高は年間42億6000万ドル程度と推定されている。また、その月産能力は現在約10万枚(300mmウェハ)程度と見られているが、2021年にLine 11の半分が転換されれば12~13万枚規模となり、シェアトップのソニーセミコンダクタソリューションズの生産能力に近づくとしている。
しかし、そのソニーも長崎テクノロジーセンターに新ファブを建設中で、さまざまな半導体を手掛けるSamsungが、そう簡単にイメージセンサに集中投資を続けるソニーの生産能力を越えることは難しいとみられる。
SamsungはCMOSイメージセンサシェアトップを目指す理由
Samsungは、韓国政府が掲げる(メモリからの利益偏重からの脱却を図り、非メモリでも利益を得る)「総合半導体強国」方針に沿って、2019年4月にシステムLSI(SoC)事業ならびにファウンドリ事業の強化を図り、世界トップシェアを目指す目的で、2030年までに総額133兆ウォン(発表当時の為替レートで約13兆円)の投資を行うという長期計画「半導体ビジョン2030」を発表している。
そのシステムLSI事業にはスマホ用プロセッサや5G用モデムチップなど自社開発のロジックデバイスのほか、CMOSイメージセンサも含まれる。システムLSI事業で世界トップシェアになる、ということはCMOSイメージセンサトップのソニーを抜くための戦略を推し進めることも含まれることとなる。このため、今後、Samsungとソニーは長きにわたってCMOSイメージセンサの生産能力で競い合う可能性が高い。
2020年後半、画素ピッチ0.7μmで1億800万画素を実現したイメージセンサ「ISOCELL HM2」や、ToFイメージセンサなどを立て続けに発表している。また、同じく韓国のSK Hynixもソニー幹部をリクルートする形で東京にCMOSイメージセンサ研究所を設立したほか、韓国利川本社工場のDRAMラインの一部をCMOSイメージセンサへと転換するなど、やはり非メモリ事業の強化を図っている。