宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月4日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者会見を開催し、同探査機の地球帰還に向けた最新状況を説明した。はやぶさ2の地球帰還まで、いよいよあと2日。今後、地球への最後の関門と言えるカプセル分離、そして新たな旅立ちとなる軌道制御「TCM-5」と、重要なイベントがあり、目が離せない状況が続く。
次はいよいよカプセルの分離!
冒頭、挨拶に立ったJAXA宇宙科学研究所の國中均所長は、日本のこれまでの深宇宙探査を振り返った。日本の深宇宙探査はこれまで、苦戦が続いていた。火星探査機「のぞみ」は、火星への到達に失敗。はやぶさ初号機は帰還したものの、満身創痍でサンプル採取は予定通りではなかったし、金星探査機「あかつき」は観測開始が5年も遅れた。
國中所長は、「しかし、はやぶさ2は思い描いた通りのタイムラインで地球に帰ってきた。あと2日が最後の一歩だが、これでやっと『深宇宙探査ができる』ということを証明できたと思う」と胸を張った。
はやぶさ2の運用は、ここまですべて順調。最終誘導フェーズの軌道制御(TCM)も、すでにTCM-4まで完了しており、残る大きなイベントは、再突入カプセルの分離と、地球圏を離脱するTCM-5のみとなった。
リエントリ運用は、12月5日の10:30(日本時間)より開始する予定。当日、まず実施するのは、カプセルの電源を外部(探査機側)から内部へ切り替えることだ。ここでは、火工品を使ってケーブルを切断するのだが、当然ながら打ち上げ後に一度も作動させたことはないので、これがちゃんと正常に機能するかどうかがポイントになる。
12:59には、カプセル分離に向けた大きな姿勢変更が行われる。14:13にさらに少し姿勢を変更してから、14:30、地球から約22万kmの地点で、カプセルが分離される。予定通り分離が確認できれば、その1時間後の15:30よりTCM-5を開始。TCM-5は3回に分け、それぞれ30秒ほど噴射を行う予定だ。
なお、想像したくはないことだが、もし分離が確認できなかったときは、確認できるまで、何度も分離コマンドを送ることになる。万が一、最後まで分離が確認できなければ、安全のため、初号機と同じように、探査機本体も一緒に再突入することになる可能性もあるとのこと。
再突入のスケジュールは秒単位に
カプセル分離後のスケジュールは、軌道がより正確に分かってきたことで、秒単位での時刻が明らかになってきた。気になる大気圏への再突入は、12月6日の2時28分27秒。カプセルが火球となって発光するのは高度80km~40kmで、時間としては2時28分49秒~2時29分25秒の約30秒間ほどとなる見込みだ。
前回の記事でもお伝えしたように、カプセルは大気圏に再突入するまでは、精度良く飛行できる。津田雄一プロジェクトマネージャによれば、今のところ、その誤差はなんと数100mのオーダーで実現できているという。
しかし、大気圏に再突入し、パラシュートが開いた後は風任せになるため、着地点の予想範囲は、100km×150kmまで一気に広がってしまう。現地の天候が気になるところだが、ウーメラから会見に参加したJAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長によれば、「今のところ天気は良さそう」とのこと。
順調にいけば、夜の間にカプセルの落下地点を特定し、夜明け後に、回収隊がその場所に向かうことになる。時間については、國中所長は「うまくいけば昼過ぎには確保できるのでは」と見通しを述べた。
現地の準備状況も順調とのこと。12月1日~2日にかけて、ウーメラでは実時間に合わせた本格的な回収リハーサルを実施。基本的に問題は無く、いくつか細かい修正点を、本番の手順に反省させたそうだ。
JAXAは、カプセル分離と、カプセル火球のタイミングで、ネット中継も実施する予定。リアルタイムで情報が欲しい人は、そちらも参照すると良いだろう。