米中貿易戦争の影響で中国企業による米国の半導体技術へのアクセスが困難となっている中、中国政府が半導体の自給自足に向け、国内企業向けに大規模な補助金の給付を含む半導体産業振興策を打ち出した結果、無数の半導体ベンチャーが誕生したものの、そのほとんどが素人集団によるもので、専門家は起業に対する過熱に警鐘を鳴らしている。

香港の英字新聞「South China Morning Post」によると、中国国内では2020年1~8月の8か月の間、9335社が新たに半導体産業に参入したという。2019年は年間を通して約1万社が新規設立であったことを考えると、その加速度合いが分かるだろう。

同紙によれば、米政府によるHuaweiに対する、米国の技術へのアクセスが禁止されて以降、中国各地で半導体産業に対する投資ブームが起きたという。その背景には、中国中央政府および地方政府が、半導体産業を発展させるため、補助金・税制優遇措置のほかに、企業の株式上場や資金調達なども奨励するなど、各種支援を拡充していることが挙げられるという。

中国国家発展改革委員会、工業情報化部(日本の省に相当)など4つの政府機関は9月22日、共同声明を発表し、5Gや半導体などの中核的技術分野を含む戦略重点産業への投資を強化することを明らかにした。

なお同紙は、一部の半導体業界関係者の見方として、半導体産業に対する行き過ぎた投資ブームは、1950年代の「大躍進政策」のように失敗に終わるとの懸念を示している。新規参入企業の多くが半導体の研究開発ならびに生産の経験がまったくないためであるという。そのため、すでに一部の新規半導体メーカーには、経営難に陥っているところも出てきたともしている。例えば2017年11月に設立された武漢弘芯半導体製造は、設立当時、約2兆円という投資額に注目を集めたが、現在は資金繰りが悪化し、倒産寸前に陥っているという。