小惑星探査機「はやぶさ2」がもうすぐ地球に帰ってくる。この探査機はこれまで、難易度の高いタッチダウンを2回実施したほか、ローバーの着陸や、人工クレーターの生成など、予定されたミッションをほぼパーフェクトに成功させてきた。まだ1年前の話なので、このときの興奮を覚えている人も多いだろう。

参考:
「人類の手が新しい小さな星に届いた」 - はやぶさ2の津田プロマネが会見
クレーター生成の可能性は高い? - はやぶさ2の運用は次のフェーズへ
「100点満点で1000点」 - はやぶさ2津田プロマネが第2回タッチダウンを総括

打ち上げから地球帰還まで、はやぶさ2の6年間の旅路をCGで描いたプラネタリウム映像作品が『HAYABUSA2 ~REBORN』である。8月1日、つくばエキスポセンター(茨城県つくば市)にて、関係者を招いた試写会が開催され、製作を指揮した上坂浩光監督(ライブ代表取締役)が登壇、この作品にかけた想いなどを語った。

  • HAYABUSA2 ~REBORN

    つくばエキスポセンター。プラネタリウムは2月にリニューアルしたばかり

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    挨拶する上坂浩光監督。作品の上映後、1時間に渡って講演を行った

数々の名場面がCGでリアルに再現

この作品は、『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』、『HAYABUSA2 -RETURN TO THE UNIVERSE-』と続いた「HAYABUSA三部作」の完結編となるもの。製作には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が全面協力。今回も上坂監督がメガホンを取り、ナレーターも前2作に続いて篠田三郎氏が担当した。

作品としてはすでに3月に完成していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、同館で予定されていた試写会が延期になっていた。このたび、感染症対策が整ったことで、8月1日より同館での上映がスタート。ようやく試写会を開催することができた。

一旦完成した3月以降も、単に待っていたわけではなかった。JAXA側から小惑星リュウグウの最新データを得られたため、あちこちを「作り替えた」(上坂監督)という。リュウグウの地形や、砂礫の飛び散り方など、変更は多岐にわたった。そんな監督のコダワリが詰まった“最新版”を一般に公開したのは今回が初めて。

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    タッチダウンのシーン。舞い上がる砂礫の迫力がすごい

はやぶさ2は初号機と違い、大きなトラブルが何も無かったため、よく「ドラマにはならない」と言われる。しかし、平坦な場所が全く無かったリュウグウへの着陸は決して簡単なことではなく、トラブル無く実施するためには、大勢の関係者による様々な努力があった。表には出てこないドラマがたくさんあっただろう。

筆者は常々、「製作者の力量次第では、十分面白いストーリーになる」と思っていたのだが、これに見事な形で応えてくれたのが上坂監督だった。3Dグラフィックスを駆使し、タッチダウンがどれほど難しいことなのかを分かりやすく紹介。さらに、どのような方法でこの難問に挑んだのかを1つ1つ丁寧に描いており、学習としても最適だ。

はやぶさ2の冒険の中で、最もドキドキするのは衝突装置(SCI)の運用かもしれない。爆発前にリュウグウの陰に逃げないと、飛散した破片に当たって壊れるかもしれないというスリルは、まるでゲーム。そして無事退避してリュウグウに砲弾が命中したとき、舞い上がった砂礫は「黒い雪」のようで圧巻だった。

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    再突入カプセルの帰還シーン。実際には12月6日に実施予定だ

REBORNはどうやって作られたのか

はやぶさを描いて3作目の上坂監督も、はやぶさ2はノートラブルゆえに、題材としては「難しかった」という。しかしその難しいテーマにあえて挑んだのは、「はやぶさを応援する全ての人に手応えを感じて欲しかったから」だった。

当たり前ではあるが、探査機のカメラで観測対象を見ることはできても、探査機自身は写すことができない。はやぶさ2がリュウグウにタッチダウンする姿は、現実には見ることができないのだが、映像の力で可視化すれば、はやぶさ2の頑張りを誰もが“手応え”として感じることができる。これが大きな狙いだ。

そのためにこだわったのは「リアルさ」だった。上坂監督は、「想像ではなく、なるべく本物通りに作って、それを見て欲しかった」と語る。

JAXAからは、リュウグウの3Dモデルを提供してもらったものの、正確に描くにはまだメッシュが足りず、そのまま使うと、表面がのっぺりしてしまう。そこで、JAXAモデルをベースに、1つ1つの岩石のエッジが立つよう手作業で修正し、ライブモデルを制作。これにより、よりリアルな地形を実現した。

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    JAXAの公開モデル。遠くからだと十分精細に見えるが……

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    こちらはライブモデル。ディテールの違いは一目瞭然だ

また、探査機本体の表現にも注目だ。1作目の公開からはすでに10年が経過しており、CG製作環境も大きく変化した。特に計算機の能力向上は凄まじく、集大成となる今作では「ビス1本まで正確に描いた」という。こうした細部の再現には、JAXA相模原キャンパスで行われた報道公開にて、実際に機体を取材した経験が大きかったそうだ。

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    1作目のはやぶさ初号機(左)と、今作のはやぶさ2(右)の比較

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    金色のMLIのシワまで細かく再現。監督自身が取材した成果だ

今後の劇場公開やVR版にも期待

HAYABUSA2 ~REBORNは、全国各地の科学館等で上映中。上映時間は、ロングバージョンが42分、ショートバージョンが28分となっているので、どちらが上映されているのかは、公式サイト等で確認して欲しい。

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    HAYABUSA2 ~REBORN

つくばエキスポセンターでの上映はロングバージョンで、2021年3月31日までの予定。なお8月23日まで、同館への入場には事前予約が必要となっているので注意して欲しい。同日までの上映スケジュールは、月曜・水曜・金曜・日曜の午後のみ。最新情報については、同館のWebサイトを参照しよう。

ところで現在上映されているのはプラネタリウム向けのフルドーム映像なのだが、今後の劇場公開の話も進行中とのこと。映画館での平面映像には平面映像の良さがあるので、こちらも楽しみなところだ。

また自宅でフルドーム映像を楽しみたいという人には、先日配信が開始されたばかりのVR版「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」もオススメだ。筆者はOculus Questで試してみたのだが、臨場感の高さはまさにプラネタリウムそのもの。PCでも見られなくはないものの、VRヘッドセットを持っている人はぜひ体験してみて欲しい。

参考:VR版 HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-

(C)HAYABUSA2 ~REBORN製作委員会