再生可能エネルギーは我々の将来の重要な一部となるのは明らかであり、電気自動車(EV)などの新技術に電力を供給する電気エネルギーへの高まる需要を満たすとともに、環境汚染を引き起こす化石燃料や原子力発電への依存度を下げ、環境保護にもつながります。

現在使用されている様々な形態の再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電と風力発電は多く導入されるようになっており、クリーンかつ再生可能な発電の大部分を担っていますが、太陽光発電の方が優勢になりつつあり、風力発電のほぼ2倍の発電量を生み出しています。実際、2017年に導入された太陽光発電の発電量は、同期間の化石燃料ベースの総発電量を超えており、世界的なクリーンで再生可能な電力へのシフトにおける重要なマイルストーンとなっています。

現在、太陽光発電は世界の総発電量のわずか12%(500GWに相当)に過ぎないため、その普及には大きな市場機会があります。アジア太平洋地域は、世界の発電能力の半分以上を占める主要地域であり、世界の太陽光発電配備の3分の1を中国が占めています。欧州は現在、世界の発電能力の4分の1強を占めており、米国は約6分の1です。

太陽光発電の急成長(CAGRを約30%とする推定もある)は、3つの主な要因によって牽引されています。つまり、増え続ける電力需要、技術進歩、政府による規制とイニシアチブです。PV(太陽光発電)パネルは、太陽光をより効率的に電気に変換し、より小さな面積でより多くの発電が行えるように絶えず改良されており、住居への設置がより効果的になっています。

各国政府は、2020年までにエネルギー需要の20%をクリーンエネルギーで満たさなければならないとする中国の声明など、太陽エネルギーの成長を奨励する政策を策定しています。欧州連合(EU)はこれをさらに推し進め、「20-20-20」という目標を掲げて、2020年までにエネルギー効率を20%向上し、CO2排出量を20%削減し、エネルギーの20%を再生可能エネルギーから生み出すとしています。

太陽光発電技術

PVパネルはDC電圧を発生させますが、DC/DC充電器と併用する場合には、後で使用するためのエネルギーを蓄えておくバッテリバンクを充電するための「オフグリッド(送配電網に接続されていない)」の電力として使用できます。しかし、ほとんどの機器は主電源電圧のAC電源を必要とするため、多くのシステムでは、PVパネルの電圧からAC電圧を発生するインバータが不可欠です。この方式は「オングリッド(送配電網に接続されている)」として知られており、ACを主電源グリッドに接続して還流させることができるため、住宅所有者は、電力会社に売電し、電気料金と相殺する機会が得られます。

  • 太陽光発電インバータシステム

    太陽光発電インバータシステム

インバータサイズの観点からは、トレンドとして100kWを超える能力を備えた高電力集中型インバータから、それぞれが100kWまでの電力を供給可能なマルチストリングインバータへの移行が進んでいます。これらのシステムの中核となるのはDC/DC昇圧コンバータとDC/ACインバータであり、これらによってPVパネルから得られるDC電圧からAC主電源電圧(および周波数)を生成しています。同時に、これはシステムの安全で効率的な動作を確実に行うための広範な高機能の監視、制御、および保護回路でもあります。

  • 太陽光発電インバータシステム

    標準的な太陽光発電インバータシステムのブロック図

効率は、エネルギーを浪費せず可能な限り不要な熱を発生させないように、どのようなPVシステムにとっても主要目標の1つです。システムの効率が高いほど、ヒートシンクやファン、その他のハードウェアの冷却の必要性が低くなり、システムのサイズ、重量、コストを削減できます。

ワイドバンドギャップ技術は将来の太陽光発電システムに不可欠

間違いなくパワーコンバータの最も重要な要素であるMOSFET、IGBT、ダイオードなどのスイッチングデバイスは、一般にシリコンでできています。これらのデバイスは、太陽光発電システムの効率にとって非常に重要なため、オン・セミコンダクターなどの半導体メーカーは、継続的な性能向上に重点を置いた投資を行っています。しかし、半導体業界は、シリコンデバイスではこれ以上ほとんど改善できない段階まで来ています。そのため、GaNやSiCなどのワイドバンドギャップ(WBG)材料をベースとしたスイッチングデバイスが、将来の太陽光発電システムに必要な性能を実現する上で極めて重要であると考えられています。

SiCスイッチングデバイスは、「すべての電源エンジニアの問題解決策」と表現されるとおり、いくつかの主要分野で性能向上を実現できます。静的アプリケーションでは、完全スイッチオン状態での抵抗値が本質的に低いため、損失を低減でき、動作時の発熱が減少します。

最新のスイッチング電源アプリケーションでは、エンジニアはスイッチング周波数を高くすることを目指しており、その結果、インダクタやトランスなどの磁気部品を小型化できます。この方法により、多くのインバータ設計でスイッチオン時に発生するサージ電流を低減できます。シリコンベースのMOSFETでは、スイッチングサイクルごとに必要なゲート電荷量(Qg)が比較的大きいため、周波数が高くなると動的損失も増加します。

SiCデバイスでは、動的スイッチング損失がはるかに小さいため、より高いスイッチング周波数を使用でき、同時に性能向上(および小型化)も実現できます。比較すると、標準的なSiCダイオードは、80kHzでの動作時にシリコンダイオードに比べて73%損失が少なくなります。高出力太陽光発電システムでは、効率が約3%向上するため、性能向上を実現できます。

SiCソリューションは高価であるという認識がいまだにあります。これは事実ではありませんが、これらのデバイスは以前から市販されているにもかかわらず、システム全体のコストや総所有コストではなく、個々のデバイスのコストに焦点が当てられているために、SiCの採用率は予測よりも低くなっています。

シリコンベースの30kW電源ソリューションについて考えてみると、コストの90%はインダクタとコンデンサ(それぞれ60%と30%)が占めています。半導体デバイスは、全BOMコストのわずか10%にすぎません。個々のSiCデバイスのコストはシリコンデバイスより高くなりますが、SiCスイッチを使用すると、容量とインダクタンス値を75%低減できるためコストダウンが可能となり、スイッチング素子でのコスト増加を相殺できます。そのため、太陽光発電システム向けのSiCソリューションの全BOMコストは、アプリケーションと性能の面で大きなメリットを享受しながら、シリコンソリューションよりも低く抑えられる段階まで来ました。

最新のSiCワイドバンドギャップソリューション

オン・セミコンダクターなどの半導体メーカーは、太陽光発電システムの性能向上が可能となる先進的なSiCベースのデバイスなど、エネルギー効率の高い電源ソリューションを包括的に提供しています。高機能ゲートドライバは、SiC MOSFETと併用するために特別に最適化されており、最大許容ゲート電圧を供給して、損失を最小限に抑えるためにSiC MOSFETを完全オン状態にします。

オン・セミコンダクターの「NVHL080N120SC1」などのSiC MOSFETは、オン抵抗(RDS(ON))が80 mΩであり、ゲート電荷量(QG)とゲート容量値が低いため、EMIを低減し、高速スイッチング周波数を使用でき、前述のメリットを実現します。1200V、30Aの「FFSH30120A」などのSiCショットキダイオードには、逆回復電流とスイッチング特性の温度依存性がないため、高機能の太陽光発電アプリケーションでの使用に最適です。

まとめ

太陽光発電は、環境にも優しい持続可能なソリューションを実現できるため、将来の重要なエネルギー源になりつつあります。価格の低下、政府の政策、およびCO2排出量削減の必要性が相まって、この分野での力強い成長につながっています。

この分野では、小型で信頼性の高いシステムの設計と製造を可能にするために、効率が非常に重要であるため、進化の可能性の終焉に到達したシリコンベースのソリューションは、WBG技術に追い越されようとしています。SiCベースのデバイスは、低い損失を実現し、より高温度および高速動作周波数で動作できるため、BOMコストの大半を占めるインダクタとコンデンサのサイズとコストを大幅に削減できます。その結果、このような高効率で信頼性の高いシステムを、シリコンベースの先行品よりも低価格で設計することが可能です。

著者プロフィール

Brandon Becker
ON Semiconductor
Product Line Manager – Wide Bandgap (SiC and GaN)