露光装置メーカー大手のASMLは7月15日(欧州時間)、2020年第2四半期(4~6月期)の決算概要を発表した。それによると売上高は前四半期比36%増、前年同期比30%増の33億2600万ユーロ(約4060億円)、純利益は前四半期比92%増、前年同期比57%増の7億5100万ユーロ(約917億円)としている。

また、同四半期に注文を受けた露光装置の総額は11億ドルであり、この中にはEUV露光装置3台分の金額(4.61億ドル)を含むとしている。これよりEUV露光装置1台あたりの平均価格は1.54億ユーロ(約190億円)と計算できる。

第2四半期に出荷した露光装置は61台、うちEUVは9台

同四半期に同社は新品の露光装置を57台出荷した(中古のリファビッシュ品は4台)。その内訳はEUVが9台で、そのうち7台分の売り上げが同四半期の業績に含まれているという。また、第1四半期に出荷したEUVのうち、まだ検収が済んでいない4台については2020年下期の売り上げとして計上される見込みだという。

また、DUVについては、液浸プラットフォーム上に構築された最初のNXTシステムである「NXT:1470」の1号機を顧客に納入したという。4.0nm未満の重ね合わせ精度、高い生産性)、および専有面積の点で従来機種に対して優位性があるという。

EUVについては、複数顧客のNXE:3400Cシステムの顧客によるアップグレードを計画通りモジュラーベッセルを用いて実施したほか、稼働時間向上に向けた技術ロードマップにしたがい、Snのインラインリフィル(詰め替え) の導入に成功したという。

加えて、ASMLのアプリケーションビジネス部門では、第1世代マルチビームウェハ欠陥検査システム「eScan 1000」の出荷も開始した。5nmおよびそれ以下の技術ノードを対象にした検査システムで、9本のマルチ電子ビームを同時操作することで、シングルビームの検査ツールに比べてインラインでのスループットを600%向上させることを可能にしたという。同社は2016年に台Hermes Microvision(HMI)を買収しており、欠陥検査システムビジネスへの参入の準備を着々と進めていた。

第3四半期の売り上げ予測は36~38億ユーロ

ASMLのCEOであるPeter Wennink氏は、今後の見通しについて、「2020年第3四半期は、売上高が(第2四半期より3~5億ユーロ増の)36億ユーロ~38億ユーロ、売上総利益率(粗利率)が47%~48%、研究開発費用が約5億4500万ユーロ、SG&Aコストが約1億4000万ユーロになると予測している。ASMLの製造現場はすでにほぼ平常の状態に戻っているが、世界規模で新型コロナウイルス感染症の拡大傾向が続いているだけに、今後の成り行きを注意深く見守っている」と述べている。

TSMCとSamsung ElectronicsがEUVリソグラフィを本格的に活用してロジックデバイスの微細化競争を繰り広げており、今後両社からの追加受注が見込めるほか、Samsungは、先端DRAM量産にもEUVリソグラフィの適用を計画中であり、これに対抗してライバルのDRAMメーカーも導入を検討する方向で、EUVリソグラフィ装置を独占するASMLの業績は将来に渡りさらに好調に推移すると業界関係者は見ている。

独Berliner Glasの買収で露光装置の技術を強化

さらに同社は、EUVおよびDUVの将来のロードマップをサポートするために重要な技術として、セラミックおよび光学モジュールを手掛ける独Berliner Glasの全株式を取得することを発表した。同買収は、2020年末までに予定されている必要な規制当局の承認がすべて取得された時点で完了するが、取引詳細は非公開とされている。

ASMLは、2012年に光源メーカーの米Cymerを、2016年に台HMIを買収しているほか、独Carl Zeissの子会社Carl Zeiss SMTに資本参加するなど、独自のエコシステムを構築しようとしており、今回の買収もそうした取り組みをさらに強化する狙いによるもののようである。