TSMCが半導体業界の成長見通しを下方修正
TSMCは2020年4月中旬に台湾で開催された投資家会議において、半導体メモリを除いた2020年の半導体市場の成長率を、2020年1月に予測した前年比8%増から前年並みあるいはややマイナス成長へ下方修正したことを明らかにした。また、2020年のファウンドリ市場の成長率についてもこれまでの予測である同17%増から同7~13%増へと引き下げた。
ただし自社の2020年の売上高については、半導体市場全体ならびにファウンドリ市場の平均成長率を上回る同14~19%増(ドルベース)を目指すとしている。
2020年1月時点では、2割増のプラス成長を目指していたので、わずかな下方修正ということになる。予測に幅をもたせたのは、新型コロナウイルス感染拡大の収束がいつになるかはっきりわからないためであるという。
また、2020年の設備投資見通しは従来の通り150億~160億ドルとしており、2019年の149億ドルとほぼ同額に据え置くとしている。
モバイル、HPC、車載、IoT市場をけん引する5G
TSMCのCEO兼副会長であるCC Wei氏は、同会議にて「新型コロナウイルスは2020年上半期中に収束に向かうと予測している。しかし、2020年下半期も引き続き最終市場の需要にある程度の混乱をもたらすとも予想されるため、以前よりも保守的な見方を採用することにした」と下方修正した理由を述べている。
また、「スマートフォン(スマホ)の出荷台数は2020年に前年比7〜9%減となる見込みだが、5Gスマホの普及率については従来どおり15%を維持すると予測している。5Gは、4つの主要市場、つまりモバイル、高性能コンピューティング(HPC)、自動車用電子機器(車載)、およびIoTを牽引する存在で、TSMCはこれら4つの主要市場向けに4つの異なるテクノロジープラットフォームを準備している」とも述べている。
3nmプロセスの試作・量産は予定通り
TSMCでは、次々世代の3nmプロセスを用いた先行リスク生産を予定通り2021年に行い、2022年後半に量産を開始する計画としている。また、この3nmプロセスのトランジスタとしては、従来プロセスと同じFinFET構造を採用することも明らかにした。業界筋情報では、TSMCは2024年の量産開始を目指して、すでに2nmプロセスの研究開発を始めているという。
また、同社は、2020年秋の発売が見込まれる次世代iPhoneシリーズに搭載されるであろう5nmプロセス採用チップの量産がすでに始まっていることも明らかにし、2020年は5nmプロセス品の売り上げが全体の10%程度を占めるまで成長するとの見方を披露している。
なお、TSMCの公式発表によると、2020年第1四半期時点で、最先端の7nmプロセスを用いたデバイスの売り上げは全体の35%、それほど評判が高くない10nmは0.5%で、16nmが19%となっており、16nm以下の同社の定義による先端技術の売り上げが全体の55%と過半を占めている。
2020年第1四半期の売上高は前年同期比42%増
TSMCの2020年第1四半期(1~3月期)の連結売上額(確定値)は前年同期比42%増の3106億NTドルと大きく伸び、純利益も同90%増の1170億NTドル、純利益率も37.6%と絶好調であった。ドルベースでも、売上高は同45.2%増の103億1000万ドルとなった。
2020年第2四半期の業績については、101億ドルから104億ドルと予測している。第1四半期と比べるとほぼ横並びだが、前年同期と比べると3割増の見込みである。
なお、TSMCのバイスプレジデント兼最高財務責任者(CFO) であるWendell Huang氏は、「2020年第1四半期にはHPCの需要と前四半期から続く5Gスマホ向けチップの増加に支えられて好業績をおさめた。第2四半期は、モバイル製品の需要が低下することが懸念されるが、5G関連やHPC関連チップの需要増がバランスして、売上高は第1四半期と同程度になると予想している」と第1四半期の発表資料の中で述べている。5nm採用デバイス一番乗りを目指すAppleやHuaweiなどを顧客に持つTSMCは、新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な問題になる中にあっても、ライバルに先行したいという顧客の先端プロセスへの底堅い需要に支えられ、強気の経営方針を貫いているように見える。