DellおよびEMCジャパンは、今年の2月に発表した中堅企業におけるIT投資規模および投資動向、潜在化している課題を調査した「IT投資動向調査」の中から、働き方改革への取り組みを抜き出し、どの程度の導入状況であるかや課題は何かをビデオ会議を使って解説した。

「IT投資動向調査」は同社(DellおよびEMCジャパン)が毎年行っているもので、2月に発表された調査は2019年12月9日~2020年1月24日に、従業員数100~1000人の国内中堅企業1,300社に対してアンケートにより行ったもの。

それによると、働き方改革の具体的な取り組みとして、テレワーク・在宅勤務の導入を挙げる企業が25.1%と前年度から8.4ポイント増加したほか、PCをデスクトップからノートへのリプレースを推進する企業は16%と前年度から2ポイント増加した。働き改革への取り組み中で前年度から増加しているのは、この2項目だという。

  • 中堅企業向けリモートワーク・在宅勤務導入の変化

デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏はこの結果について、「調査は新型コロナ対応の前だが、中堅企業でもテレワークやリモートワークが浸透して来ている」と分析した。

  • デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏(2月28日の「IT投資動向調査」の発表会にて)

実際にデルのPCの出荷台数でも、2019年5月期(4半期)では41%であったノートPC比率が、2020年2月期には55%に増加。今年の4月に限って言えば、64.5%に急拡大しているという。

  • 中堅企業向けデルのノートブック PC 出荷台数比率

ただ、企業が利用するPCの55%はデスクトップで、PCのリプレースの際にも、業務が変わっていないため、そのままデスクトップを継続するケースがあるという。また、セキュリティ対策が進んでいる企業はノートPC化を推進しているという。

働き方改革に着手している企業は、昨年より7.7%増加して85.2%になったほか、実際に取り組んでいる企業は16.3%と大幅増加。目的は、生産性向上が33.9%と最も高く、従業員のモチベーション向上(19.5%)、従業員の心身の健康(16.7%)、従業員の定着(16.5%)と続く。

具体的な施策としては、時間外労働の上限設定(52.1%)、ペーパーレス化の推進(38.2%)、ノー残業デーの徹底(30.2%)、テレワーク・在宅勤務の導入(25.1%)、社員の健康増進施策(%24.8%)が上位。

  • 中堅企業の働き方の変化

デル 広域営業統括本部 中部営業部兼西日本営業部長 木村 佳博氏は「テレワークや在宅勤務の導入など、ITの環境整備を行っているのが今年の特徴」と話す。

  • デル 広域営業統括本部 中部営業部兼西日本営業部長 木村 佳博氏(2月28日の「IT投資動向調査」の発表会にて)

一方、働き方改革における変化では、「何も変わっていない」が44.7%と昨年と変わらずトップであり、社員が実感を感じていない状況が浮き彫りになっている。

デル 広域営業統括本部が実践したテレワーク

説明会では、デル 広域営業統括本部が実践するテレワークをベースに、テレワーク環境を整備するための7つのステップが紹介された。

7つのステップは、モバイルPCの配布、自宅のWi-Fi環境の整備、VPN接続環境の整備、Web会議ツールの導入、リモートデスクトップの導入、ビジネスに必要なデータに自宅からアクセスするためのNASファイルサーバ導入、シンクライアントの導入で、デバイス、通信、コミュニケーション、セキュリティの4つの領域に分けられている。

  • 広域営業統括本部が実践した「いきなり全社テレワークと言われた」ときの実現の7ステップ

モバイルPCの配布に関しては、会社で利用するPCをモバイルPCにすれば、そのまま自宅でも利用できるため、新たにPCを配布するよりもコスト的に抑えられるほか、別にモニターを用意するかどうかで、業務効率に大きな差が出るという。

個人所有のPCを利用してテレワークする場合は、OSが古い場合、セキュリティの脆弱性があるため、OSを最新にすることが必須だという。

  • モバイルPC導入のポイント

なお、同社はヘッドセットが付属する「テレワーク・デイ」パッケージを7月末まで特別価格で提供することを3月に発表している。

自宅のWi-Fi環境に関しては、若年層において、自宅に通信環境がないケースがあるため、ポケットWi-Fi端末を配布ことも考慮すべきだという。また、無線の暗号化等の対応も必要になるが、個人のITリテラシに依存するため、利用に懸念がある場合は、有線LANでモバイルPCと接続することも視野に入れたほうが良いという。

VPN接続環境整備では、アクセスが集中するため、高速なSSL-VPN装置に切り替えを考慮すべきだが、十分な帯域や回線数を用意できない場合は、常時アクセスは業務上社内へのアクセスが必須なユーザーに限定する、アクセスが必要な業務は部門ごとに利用時間を決めてピーク時を分散するなどの対応を考慮すべきだという。

  • VPN接続環境整備

Web会議ツールとしては、Zoom/Webex/Skype/Teamsなどさまざまなものが存在するが、Web会議のほかにも、Teams/Slack/Chatworksなどのグループチャットツールも導入し、メールとともに、用途によってツールを使い分けたほうがいいという。

  • コミュニケーションツールの使い分け

リモートデスクトップとしては、VDI(仮想デスクトップ)が有効だが、コストが課題の場合はリモートデスクトップ(RDS)にすれば、1/6程度のコストで導入できるという。

  • リモートデスクトップ

モバイルPCローカルにデータを残したくない場合は、シンクライアントが有効だが、故障発生時には、端末を交換するだけでよく、修理対応が必要がないというメリットもあるという。

テレワーク導入時のサポート負荷の軽減

テレワーク導入など、新たな環境を導入するとヘルプデスクへの問い合わせ件数が増加するが、同社では、ユーザーのサポート業務を支援するため、7月31日まで「PCマルチベンダサポートプログラム」を無償で提供するほか、PCマルチベンダーサポートポータルのFAQシステムの外部提供を行うという。

  • OS刷新・環境変化におけるヘルプデスク件数の推移

  • 「PCマルチベンダサポートプログラム」の対応範囲

  • PCマルチベンダーサポートポータルのFAQシステム